瞳の中の住人
真鍮のドアベルが鳴る。そのたびに鼓動がはねて、私はおそるおそる入り口を確認した。
オレンジ色の夕日が窓辺を鮮やかに照らし、とっぷりと日が暮れ、暗闇が訪れても、白石刀哉は現れなかった。
それからさらに三日がながれた。自分から本を貸してほしいと言ったくせに、取りにこないとはなにごとだ。私は自分勝手にふてくされた。
思えば白石刀哉について、私はなにも知らなかった。私の日常に、いつも彼がわりこんでくるだけで、連絡先など当然交換していない。
兄と同じ大学に通っていると言っていたが、学部は聞いていない。けれどアルバイト先の書店ならわかる。
土曜日。電車に乗り、私は兄の元アルバイト先を訪れた。
最寄り駅にある書店と違って、店内は広く本の冊数が多い。入り口をぬけて、出版社別に分けられた本棚を見るとはなしに見つめて歩き回った。
土曜日の午前中という時間帯に白石刀哉が勤務している保証はなかったが、紺色のエプロンをつけた店員を見かけるたびに注視し、彼を探した。
ふいにポンと肩に手を置かれた。こそこそと人捜しをしていたので、驚きから体がビクついた。
「あ。やっぱり。翼の妹さんだ」
オレンジ色の夕日が窓辺を鮮やかに照らし、とっぷりと日が暮れ、暗闇が訪れても、白石刀哉は現れなかった。
それからさらに三日がながれた。自分から本を貸してほしいと言ったくせに、取りにこないとはなにごとだ。私は自分勝手にふてくされた。
思えば白石刀哉について、私はなにも知らなかった。私の日常に、いつも彼がわりこんでくるだけで、連絡先など当然交換していない。
兄と同じ大学に通っていると言っていたが、学部は聞いていない。けれどアルバイト先の書店ならわかる。
土曜日。電車に乗り、私は兄の元アルバイト先を訪れた。
最寄り駅にある書店と違って、店内は広く本の冊数が多い。入り口をぬけて、出版社別に分けられた本棚を見るとはなしに見つめて歩き回った。
土曜日の午前中という時間帯に白石刀哉が勤務している保証はなかったが、紺色のエプロンをつけた店員を見かけるたびに注視し、彼を探した。
ふいにポンと肩に手を置かれた。こそこそと人捜しをしていたので、驚きから体がビクついた。
「あ。やっぱり。翼の妹さんだ」