瞳の中の住人
 そう言って深々と頭を下げると、白石刀哉は持参したバッグから香典をさし出した。中央に『御仏前』と書かれている。私は小さく会釈し、それを受け取った。

 地味な服装や控えめな態度が好印象だった。白石刀哉はマナーにきちんとしている。さすがは兄の友人だ。そう思ったところで、彼に対して最初に抱いた既視感を思い出す。

 彼はどことなく兄と似ていた。なにも容貌が似ているというわけではない。彼の放つ雰囲気、オーラが亡くなった兄を想起させた。

「綾音。お客様かい?」

 キッチンで炊事をしていた祖母が仏間に顔を出した。丸いお盆にお客様用の茶托が載っている。

 私は祖母に彼のことを説明した。あたりさわりのない会話をし、彼がこちらの様子を配慮したのか、早々の退去となった。

 それまで高校の制服姿だったことを思い出し、二階の自室で着替えるため、私は階段に足をかけた。
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