瞳の中の住人
頬の内がわがやけにこそばゆい。気になって右手で頬をつねる。
淹れたてのコーヒーをカップにそそぐと、白い湯気がシルクのようにくるくると立ちのぼり、香ばしい香りを充満させた。
少しのあいだ沈黙が訪れ、僕は店のコーヒーを堪能する。
綾音がためらいがちに口をひらいた。兄である、翼の話が聞きたいと言う。そのさい真正面から目があってしまい、彼女がハッと息をのんだ。どうしたのだろうと思い、尋ねる。
「ああ、いえ。白石さんも茶色の目をしているな、と思って」
“兄と同じで”。彼女の言葉のうらを読み、口元が引きつった。これはどう反応すればいいのだろう。レシピエントだと明かすのは、正直気が引ける。
「すみません。あなたの目が兄と似ているので驚いてしまって」
「そう、ですか」
「兄は。バイト先ではどんな感じでしたか?」
ふたたび目を見られるのが忍びなく、綾音から視線をそらした。夢の記憶をたよりに、僕が感じた木崎翼の印象を告げた。
「真面目でしたよ、とても。勤勉だし、人当たりもすごく良くて。それに……もててた、かな」
「そうなんですか」
綾音の声がどこか沈んで聞こえた。
淹れたてのコーヒーをカップにそそぐと、白い湯気がシルクのようにくるくると立ちのぼり、香ばしい香りを充満させた。
少しのあいだ沈黙が訪れ、僕は店のコーヒーを堪能する。
綾音がためらいがちに口をひらいた。兄である、翼の話が聞きたいと言う。そのさい真正面から目があってしまい、彼女がハッと息をのんだ。どうしたのだろうと思い、尋ねる。
「ああ、いえ。白石さんも茶色の目をしているな、と思って」
“兄と同じで”。彼女の言葉のうらを読み、口元が引きつった。これはどう反応すればいいのだろう。レシピエントだと明かすのは、正直気が引ける。
「すみません。あなたの目が兄と似ているので驚いてしまって」
「そう、ですか」
「兄は。バイト先ではどんな感じでしたか?」
ふたたび目を見られるのが忍びなく、綾音から視線をそらした。夢の記憶をたよりに、僕が感じた木崎翼の印象を告げた。
「真面目でしたよ、とても。勤勉だし、人当たりもすごく良くて。それに……もててた、かな」
「そうなんですか」
綾音の声がどこか沈んで聞こえた。