瞳の中の住人
「まだよ。十二月だから」
十二月、とおうむ返しにつぶやき、あることを思い出した。
いつの夢だったか、木崎翼がアルバイト代をためて、女性もののネックレスを買おうと予定をたてている内容があった。
スマートフォンに入力した誕生日スタンプを確認し、『彼』にも特別なだれかがいるのだとわかった。十二月二十六日生まれのだれかに、『彼』は十数万円のプレゼントを用意するつもりでいた。
試しに誕生日の日付けを二十六日かどうか尋ねてみた。綾音は驚き、正解を出した。
思えば『彼』の、綾音にたいする視線はいつも愛情に満ちていた。『彼』がだれに言い寄られても決してイエスを出さなかったのは、綾音を愛していたからだ。
いくら愛しあっていたとしても、兄妹間ではむすばれない。それでも、翼は妹を想っていたし、妹も同じように兄を……。
翼の秘めた想いに気づき、僕は愕然となった。
それじゃあ、僕が今、綾音にいだいているこの気もちは翼の記憶によるもの、つまり洗脳というものではないだろうか?
妹を愛おしく想う翼の視線を介して、僕は綾音を知った。実際の彼女に興味を引かれ、会ってみたくなった。
十二月、とおうむ返しにつぶやき、あることを思い出した。
いつの夢だったか、木崎翼がアルバイト代をためて、女性もののネックレスを買おうと予定をたてている内容があった。
スマートフォンに入力した誕生日スタンプを確認し、『彼』にも特別なだれかがいるのだとわかった。十二月二十六日生まれのだれかに、『彼』は十数万円のプレゼントを用意するつもりでいた。
試しに誕生日の日付けを二十六日かどうか尋ねてみた。綾音は驚き、正解を出した。
思えば『彼』の、綾音にたいする視線はいつも愛情に満ちていた。『彼』がだれに言い寄られても決してイエスを出さなかったのは、綾音を愛していたからだ。
いくら愛しあっていたとしても、兄妹間ではむすばれない。それでも、翼は妹を想っていたし、妹も同じように兄を……。
翼の秘めた想いに気づき、僕は愕然となった。
それじゃあ、僕が今、綾音にいだいているこの気もちは翼の記憶によるもの、つまり洗脳というものではないだろうか?
妹を愛おしく想う翼の視線を介して、僕は綾音を知った。実際の彼女に興味を引かれ、会ってみたくなった。