瞳の中の住人
綾音に会って直接本を返そうとかんがえていたが、母親に渡して言付けることにした。
そのさい、家にあったしおりに僕の連絡先を書きしるしてはさんでおいた。綾音が、僕自身に興味をいだいているとすれば、それに気づくかもしれないと思った。
「すみません。もう本を借りるのは遠慮しておきますので、綾音さんによろしくお伝えください」
会計のとき、そう言って母親に文庫本を渡した。母親は心底ざんねんそうにしていた。
「コーヒーはまた飲みにおいでね」とありがたい言葉もかけてもらった。
最初は興味本位だった。僕にあたえられた眼球のドナーである木崎翼を知り、『彼』が見てきた世界のなかで数多く出演する妹の綾音を見るにつけ、魅力的な笑顔に惹かれて実際に会ってみたくなった。
僕は彼女に惹かれていた。僕の本心から、彼女に恋をしているのだと、会えない時間をおいてようやく自信がついた。
綾音とは本の貸し借りでつながっていたけれど、それを返却した今、彼女とのつながりは完全にとだえてしまった。
そのさい、家にあったしおりに僕の連絡先を書きしるしてはさんでおいた。綾音が、僕自身に興味をいだいているとすれば、それに気づくかもしれないと思った。
「すみません。もう本を借りるのは遠慮しておきますので、綾音さんによろしくお伝えください」
会計のとき、そう言って母親に文庫本を渡した。母親は心底ざんねんそうにしていた。
「コーヒーはまた飲みにおいでね」とありがたい言葉もかけてもらった。
最初は興味本位だった。僕にあたえられた眼球のドナーである木崎翼を知り、『彼』が見てきた世界のなかで数多く出演する妹の綾音を見るにつけ、魅力的な笑顔に惹かれて実際に会ってみたくなった。
僕は彼女に惹かれていた。僕の本心から、彼女に恋をしているのだと、会えない時間をおいてようやく自信がついた。
綾音とは本の貸し借りでつながっていたけれど、それを返却した今、彼女とのつながりは完全にとだえてしまった。