瞳の中の住人
 壁掛け時計を見上げると、指針は四時四十五分をさしていた。

 十一月に入った今、日が暮れるのも早くなっていたし、母や伯父に会話を聞かれたくないので、『Komorebi』以外の場所で話がしたい。

「じゃあ。明日は? ちょうど日曜日だし、白石さんの予定があいていたら……」

「大丈夫だよ」

「なら、外で待ち合わせしましょう。今日、兄が通っていた大学の近くに、大きな噴水のある公園を見かけたんだけど……。そこに十一時で。どうかしら?」

「……いいよ。わかった」

 通話をきったあと、心臓の鼓動はすっかり速くなっていた。頬が熱い。

 窓際にある学習机にちらと視線をおくると、その上に置いた丸い化粧鏡にまっ赤な顔をする私がうつっていた。

 *

 高く水しぶきをあげる噴水を遠目に眺めながら、スマートフォンで時刻を確認した。液晶画面には『10:46』と表示されている。少しだけ早く着いたようだ。視線をあちこちにとばし、空いているベンチに歩みを進めた。
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