瞳の中の住人
「あなたに会って、いろいろと確かめたいことがあったの」
いろいろ、とつぶやき、「たとえばどんな?」と彼の視線がとんでくる。
私をとらえる丸い茶色の瞳に、前ほど兄の面影を感じず、内心で「あ」とつぶやいていた。
これが違和感の正体だと気づく。
初めて彼に会ったときは、あんなにも兄と似ていると思ったのに、今ではそう感じたのが不思議なほどに似ていない。それがかえって心地よかった。
「昨日、白石さんのことを調べたの。大学に行ってあなたのことを尋ねたら学生センターの方に休学中だと言われたわ。それにあなたは兄と同じ書店で働いているって私に言ったけど、実際はそうじゃなかった。どうして嘘をついたの?」
白石刀哉はしばし私を見つめたあと、視線をそらし、噴水に目を向けた。「ごめん」と観念したような返事がとどく。
「バイト先が同じだと言っておいたほうが、友達という関係性に信憑性が増すかと思って……」
「兄と。親しくはなかったの? リアルじゃなくても、たとえばSNSのなかでだけ、話をしていたとか?」
「そんなんじゃないよ」
白石刀哉は首を振り、やるせなさそうに息を吐き出した。
いろいろ、とつぶやき、「たとえばどんな?」と彼の視線がとんでくる。
私をとらえる丸い茶色の瞳に、前ほど兄の面影を感じず、内心で「あ」とつぶやいていた。
これが違和感の正体だと気づく。
初めて彼に会ったときは、あんなにも兄と似ていると思ったのに、今ではそう感じたのが不思議なほどに似ていない。それがかえって心地よかった。
「昨日、白石さんのことを調べたの。大学に行ってあなたのことを尋ねたら学生センターの方に休学中だと言われたわ。それにあなたは兄と同じ書店で働いているって私に言ったけど、実際はそうじゃなかった。どうして嘘をついたの?」
白石刀哉はしばし私を見つめたあと、視線をそらし、噴水に目を向けた。「ごめん」と観念したような返事がとどく。
「バイト先が同じだと言っておいたほうが、友達という関係性に信憑性が増すかと思って……」
「兄と。親しくはなかったの? リアルじゃなくても、たとえばSNSのなかでだけ、話をしていたとか?」
「そんなんじゃないよ」
白石刀哉は首を振り、やるせなさそうに息を吐き出した。