瞳の中の住人
白石刀哉.5
眼球移植をしたあとに起こりはじめた睡眠障害について、僕はつつみかくさず、綾音に打ち明けることにした。
最初はどこかのフィクションの物語を楽しむように夢を見ていたこと。
それもしだいに現実味をおびてきて、リアルな詳細に不安をおぼえたこと。
『木崎翼』と『木崎綾音』の名前を印刷した書類を見たとき、ある可能性に気がついたこと。
そして自らの予感が的中し、僕が見てきた夢がすべて翼の視界であったと判断したこと。
昼も夜も、何日何時間にもわたって夢を見つづけ、今となってはすっかりその夢も見なくなったこと。
綾音はところどころで息をのみ、眉をひそめた。しかし驚きはするものの、ある種の空想じみた僕の話にしっかりと耳を傾け、決して馬鹿にしたりはしなかった。
「なるほど……兄が見てきたものを」
話し終えたあと、綾音はぽつりとつぶやき、口元に手をあてて思案していた。なにをかんがえているのか、不安に思って見ていると、彼女の頬がほんのりと赤くそまった。
「それじゃあ。白石さんはもともと私を知っていた、ということよね」