瞳の中の住人
木崎綾音.6
「翼さんもきみと同じ気もちだったと思う」
白石刀哉が真面目な口調で言い、その瞳とぶつかった。
「兄妹だけど、きみたちは両思いだった」
はっきりと告げられて、彼が私の気もちに気づいていることを知った。
けれどそうであるものの、彼の言ったことがどうにも真実とは思えず、そんなわけないよ、と言い返していた。
「どうして?」
「だって、兄にはちゃんと彼女がいたから」
「彼女?」
白石刀哉は怪訝な顔で眉をひそめた。
「そうだよ。同じ学科で同じ本屋さんでバイトしてた浅海さんって人。髪にパーマをかけてキリッとした美人の」
「たしかにそんな女子から告白はされていたようだけど、翼さんは断ってたよ」
「……え?」
明確な否定を受けて少しのあいだ、思考が停止する。なにもかんがえられなくなる。
「まえにさ、俺が綾音さんの誕生日を言いあてたの、覚えてる? あれは翼さんが見ていたスマホから知ったんだ。十二月二十六日に誕生日の予定を入れて、彼は女性もののかわいらしいネックレスを選んでいた。その日までにバイト代をためなきゃいけないほど、高価なプレゼントで……。ただの妹にそこまでしないだろって思った」