裏側の恋人たち
「あっち側ではないよ。僕の実家は人を雇って開業医をしているけど、眼科だけしているから大きな病院じゃないしね。お金の苦労をしているかって聞かれたら、子どもの頃から親のおかげで苦労していないからそれはちょっとごめんと思うけど。むやみやたらな贅沢もしていないかな」
「ごめんなさい。ちょっと失礼でした」
「いいや。僕としては浜さんに興味を持ってもらえて嬉しいよ。君ってつかみどころがなくてどうやって近付いたらいいのか全然わからないから」
ニコニコとわたしに笑顔を向けてくる福岡先生が眩しい。
結構なお金持ちだと思うのだけど、本当に気取ったところがない人だ。
「先生。せっかくなのでストレートに聞いていいですか」
思い切って切り出してみた。このチャンスを逃すと聞けないかもしれないし。
「いいよ。どうぞ」と頷いてくれる福岡先生は焦る様子もなくむしろ当然だという落ち着いた感じで微笑んでいる。
「先生はどういうつもりでわたしのこと誘ってくださっているんですか。当直の差し入れもそうですけど」
「そうだね」と頷いた先生が手にしていたコーヒーカップを置いた。
「浜さんとは仕事に関係なく気軽に二人で外で会う関係が築けたらと思ってるよ。出来ればそこから更に進んで恋愛関係になりたいとも。浜さんとなら穏やかに過ごしていけるんじゃないかって思って。激しい恋とは違うかもしれないけど、僕は浜さんに好意を持っている」
そう言った福岡先生の目が優しくて、顔が熱くなり思わず俯いてしまう。
これって告白だよね。
ストレートに聞いたしまったのはわたしだけど、こうやって好意を伝えてもらうのもとっても恥ずかしい。
いつものような患者さんや患者さんのご家族の「結婚を前提に・・・」とはちょっと違う気がする。
「今さらなんだけど、浜さんは今恋愛をしている?好きな人はいない?」
「恋愛ですかーーー。昔からうっすら憧れている人はいるんですけど、それが恋愛かと言われるとわかりません。恋人がいた人がいた時もその人のことは憧れていて、でもだからといってその人とどうこうなることは全く考えたことがないんです。だからその人のことは好きな芸能人みたいな感覚なのかもしれないと思っていますけど」
「そうか、身近にいる憧れの存在ね。じゃあもう一つ。
ーーー僕のことはどう思う?」
切り替えされて身が引き締まる。
こっちから深い質問をしたのだからきちんと答えるべきなんだと思う。
「先生とは食の好みも合うし、仕事もやりやすいし話をしていても退屈しないし、とても落ち着きます。でも、ごめんなさい、これが恋になるかどうかはわかりません。正直曽根田さんへの対応もちょっとモヤモヤしました」
曽根田さんへの対応はマイナスだったと言うと、福岡先生は苦笑した。
「だよね。あの時は浜さんがやきもち焼いてくれればいいと思ったんだけど裏目に出たね。ーーーなにぶん恋愛に疎いものだから」
「恋愛に疎いですか?先生も?」
先生《《も》》っていうのは失礼かもしれないけど。
穏やかな見た目から恋愛上級者には見えないけれど、疎いようにも見えない。
「いい年をして何をって思われちゃうけど、余り自分からぐいぐいって行く方じゃなかったからね」
ああ、うん。納得。
受け身だったのか、いままで。
「ごめんなさい。ちょっと失礼でした」
「いいや。僕としては浜さんに興味を持ってもらえて嬉しいよ。君ってつかみどころがなくてどうやって近付いたらいいのか全然わからないから」
ニコニコとわたしに笑顔を向けてくる福岡先生が眩しい。
結構なお金持ちだと思うのだけど、本当に気取ったところがない人だ。
「先生。せっかくなのでストレートに聞いていいですか」
思い切って切り出してみた。このチャンスを逃すと聞けないかもしれないし。
「いいよ。どうぞ」と頷いてくれる福岡先生は焦る様子もなくむしろ当然だという落ち着いた感じで微笑んでいる。
「先生はどういうつもりでわたしのこと誘ってくださっているんですか。当直の差し入れもそうですけど」
「そうだね」と頷いた先生が手にしていたコーヒーカップを置いた。
「浜さんとは仕事に関係なく気軽に二人で外で会う関係が築けたらと思ってるよ。出来ればそこから更に進んで恋愛関係になりたいとも。浜さんとなら穏やかに過ごしていけるんじゃないかって思って。激しい恋とは違うかもしれないけど、僕は浜さんに好意を持っている」
そう言った福岡先生の目が優しくて、顔が熱くなり思わず俯いてしまう。
これって告白だよね。
ストレートに聞いたしまったのはわたしだけど、こうやって好意を伝えてもらうのもとっても恥ずかしい。
いつものような患者さんや患者さんのご家族の「結婚を前提に・・・」とはちょっと違う気がする。
「今さらなんだけど、浜さんは今恋愛をしている?好きな人はいない?」
「恋愛ですかーーー。昔からうっすら憧れている人はいるんですけど、それが恋愛かと言われるとわかりません。恋人がいた人がいた時もその人のことは憧れていて、でもだからといってその人とどうこうなることは全く考えたことがないんです。だからその人のことは好きな芸能人みたいな感覚なのかもしれないと思っていますけど」
「そうか、身近にいる憧れの存在ね。じゃあもう一つ。
ーーー僕のことはどう思う?」
切り替えされて身が引き締まる。
こっちから深い質問をしたのだからきちんと答えるべきなんだと思う。
「先生とは食の好みも合うし、仕事もやりやすいし話をしていても退屈しないし、とても落ち着きます。でも、ごめんなさい、これが恋になるかどうかはわかりません。正直曽根田さんへの対応もちょっとモヤモヤしました」
曽根田さんへの対応はマイナスだったと言うと、福岡先生は苦笑した。
「だよね。あの時は浜さんがやきもち焼いてくれればいいと思ったんだけど裏目に出たね。ーーーなにぶん恋愛に疎いものだから」
「恋愛に疎いですか?先生も?」
先生《《も》》っていうのは失礼かもしれないけど。
穏やかな見た目から恋愛上級者には見えないけれど、疎いようにも見えない。
「いい年をして何をって思われちゃうけど、余り自分からぐいぐいって行く方じゃなかったからね」
ああ、うん。納得。
受け身だったのか、いままで。