裏側の恋人たち
カシスのジェラートの最後のひとくちを飲み込んで店奥に視線を向けるとさっきの場所に将樹さんの姿があった。
というかこっちを見張ってたんじゃないかと思うけど。暇なのか?
「ちょっと聞いてくるね。その間にクミちゃんは美也子に聞きたいこときいておいて」
「わーい、センパイお願いします」
美也子のお願いに小さく頷いて席を立った。
壁を背に立つ男前の店長、将樹さんに向かって歩いて行くと将樹さんが意味ありげな笑顔になった。
「ずいぶんお久しぶり、響さん」
「ええ、お久しぶりです、将樹さん」
「ちっとも顔を出してくれないから見捨てられたのかと思ったよ」
「遠方に出張してたんです。私もそれなりに忙しくって」
将樹さんは瑞紀からなにか話を聞いているんだろうか。聞きたい気持ちもあるけれど、やっぱり瑞紀の結婚話なんて聞きたくはない。
「先週響さんのお兄さんの事務所にお邪魔したんだけど、話は聞いてる?」
「え、うちの兄のところ?」
「そう。事務所の3階の瑞紀の自宅を会社の社宅にすることにしたからその名義変更諸々手続きを響さんのお兄さんにお願いすることになってさ。お兄さん、穏やかで感じのいい人だね」
あああと納得する。
兄は司法書士の仕事をしているから、そういうことか。
「兄がお役に立つならいいんですけど」
「・・・・瑞紀の自宅の話は気にならない?」
将樹さんが口元に笑みを浮かべ私の顔をのぞき込んでくる。
「気にならないです。私には関係ありませんから。そんなことより、仕事の話をしていいですか」
将樹さんのからかいをまるっと無視して「ここレストランウエディングってお願いできるんですか」と本題に入った。
「響さん、もしかしてここでウエディングパーティーしたいの?」
将樹さんの目が丸くなる。
「お料理は美味しいしロケーションもいいし。だから、可能かどうか聞いて欲しいって頼まれたんですけど」
視線を私がいたテーブルの方に向けると将樹さんが小さく息を吐いた。
「ああ、一瞬響さんのことだと思って驚いたよ。あいつからもそんな話は聞いてないし」
「わたしがここで?」
あり得ないと首を振った。
そんな相手もいないし、見つけたとしても過去に好きだった男の持っているお店でウエディングをするなんてあり得ない。
「一応ここでウエディングを受けることは出来るには出来るんだけど日程と予算がネックかな。結構先まで席の予約が入ってることと、うちの料理の特性上安価で提供するのが難しい。だから他のレストランよりも割高になるから、コスト削減したいのならうちは不向きってことだね」
「そっか、オーガニックで更に拘りの食材だからコストかかってますもんね」
「そう。それに、招待客もさ、一流ホテルのウエディングならご祝儀も余分に出すけど、レストランウエディングなら少し減額しようかなと思う人もいるんだよ。他の店ならそれでいいかもしれないけど、うちの店だと新郎新婦の負担が大きくなる」
「だから予算がネックなのね」
そうなんだよと将樹さんは頷いた。
「その辺りのことを考慮して検討しないといけないってことか。勉強になりました。ありがとうございます。そう言っておくね。それでもやりたいって言ったら相談に乗ってもらえる?」
「ああ、もちろんだよ」
「よろしくお願いします」
自分の役目は果たしたから席に戻ろうとすると「待って」と将樹さんから止められる。
「響さん、たまには喧嘩もするだろうけど、ちょっと長くないか?どのみちアイツが怒らせたんだろうけど、そろそろ許してやってくれない?」
「変なこと言いますね、将樹さん」
あれは喧嘩という次元の話じゃない。
というかこっちを見張ってたんじゃないかと思うけど。暇なのか?
「ちょっと聞いてくるね。その間にクミちゃんは美也子に聞きたいこときいておいて」
「わーい、センパイお願いします」
美也子のお願いに小さく頷いて席を立った。
壁を背に立つ男前の店長、将樹さんに向かって歩いて行くと将樹さんが意味ありげな笑顔になった。
「ずいぶんお久しぶり、響さん」
「ええ、お久しぶりです、将樹さん」
「ちっとも顔を出してくれないから見捨てられたのかと思ったよ」
「遠方に出張してたんです。私もそれなりに忙しくって」
将樹さんは瑞紀からなにか話を聞いているんだろうか。聞きたい気持ちもあるけれど、やっぱり瑞紀の結婚話なんて聞きたくはない。
「先週響さんのお兄さんの事務所にお邪魔したんだけど、話は聞いてる?」
「え、うちの兄のところ?」
「そう。事務所の3階の瑞紀の自宅を会社の社宅にすることにしたからその名義変更諸々手続きを響さんのお兄さんにお願いすることになってさ。お兄さん、穏やかで感じのいい人だね」
あああと納得する。
兄は司法書士の仕事をしているから、そういうことか。
「兄がお役に立つならいいんですけど」
「・・・・瑞紀の自宅の話は気にならない?」
将樹さんが口元に笑みを浮かべ私の顔をのぞき込んでくる。
「気にならないです。私には関係ありませんから。そんなことより、仕事の話をしていいですか」
将樹さんのからかいをまるっと無視して「ここレストランウエディングってお願いできるんですか」と本題に入った。
「響さん、もしかしてここでウエディングパーティーしたいの?」
将樹さんの目が丸くなる。
「お料理は美味しいしロケーションもいいし。だから、可能かどうか聞いて欲しいって頼まれたんですけど」
視線を私がいたテーブルの方に向けると将樹さんが小さく息を吐いた。
「ああ、一瞬響さんのことだと思って驚いたよ。あいつからもそんな話は聞いてないし」
「わたしがここで?」
あり得ないと首を振った。
そんな相手もいないし、見つけたとしても過去に好きだった男の持っているお店でウエディングをするなんてあり得ない。
「一応ここでウエディングを受けることは出来るには出来るんだけど日程と予算がネックかな。結構先まで席の予約が入ってることと、うちの料理の特性上安価で提供するのが難しい。だから他のレストランよりも割高になるから、コスト削減したいのならうちは不向きってことだね」
「そっか、オーガニックで更に拘りの食材だからコストかかってますもんね」
「そう。それに、招待客もさ、一流ホテルのウエディングならご祝儀も余分に出すけど、レストランウエディングなら少し減額しようかなと思う人もいるんだよ。他の店ならそれでいいかもしれないけど、うちの店だと新郎新婦の負担が大きくなる」
「だから予算がネックなのね」
そうなんだよと将樹さんは頷いた。
「その辺りのことを考慮して検討しないといけないってことか。勉強になりました。ありがとうございます。そう言っておくね。それでもやりたいって言ったら相談に乗ってもらえる?」
「ああ、もちろんだよ」
「よろしくお願いします」
自分の役目は果たしたから席に戻ろうとすると「待って」と将樹さんから止められる。
「響さん、たまには喧嘩もするだろうけど、ちょっと長くないか?どのみちアイツが怒らせたんだろうけど、そろそろ許してやってくれない?」
「変なこと言いますね、将樹さん」
あれは喧嘩という次元の話じゃない。