裏側の恋人たち
ーーーー結果、
ベッドもソファーも瑞紀がこだわったせいで現物がなく受注生産みたいになってしまい納期に1ヶ月かかるということであれから3週間経っても瑞紀はまだ私の狭い部屋にいる。
なんといっても私は不規則勤務で瑞紀は病気療養明けで仕事がたまっている。だからお互い休日が合わず、そして買い物も一気に済ますという時間がとれない。
おかげでちょっとずつ買っては揃えるという地道な作業になっていた。
それも楽しいといえば楽しいんだけど。
瑞紀は飲食店経営者なだけに食器に拘りがあるけれど、一緒に使うのだからと選択肢を用意してくれる。私はその中から選ぶんだけど、瑞紀のセンスがいいってだけじゃなくて私たちの趣味が合っているのだと思う。どれもいいから悩んでしまうのだ。
リネン類は私の担当で「これとこれならどっちがいい?」なんていちいちやっているから全てにおいて時間がかかるわけだ。
カーテンもフルオーダーメイドだし。
贅沢だけど、全部新品ってのも大変だ。
でも、交際期間がなかった私たちは今が交際期間なのだと思う。
嫌がらせに関してはーーー
キスは押し切られた。
「和装で結婚式するなら三三九度なんだから式で誓いのキスとか無いだろうが」って言われて。
確かにそうなのよ。
よく考えてみればそうなんだけど、私もそれは深く考えてなかったって言うか。
嫌がらせのために言っただけだったから。
それに実は具体的に結婚式のイメージがあったわけじゃ無い。
祖母と母が大切にしてきた色打ち掛けに憧れて私もって思ってたけど、教会でドレスを着て式を挙げて、披露宴で和装するってのもアリじゃないかなんて思ってもみたり。
もちろんその逆もいいんだけど。
って感じで実は拘りはなかったのだ。
だから、まあそういうわけで
ーーー押し切られてキスはしてる。
後は結婚後に、と譲らなかったら瑞紀は式場探しをはじめたのだけど、すぐに挫折した。
いつでもどこでもいいなら見つかっただろうけど、さすがにそう簡単にいくはずもない。
自分の店で、という選択もないわけではなかったらしいけど瑞紀はいい顔をしなかった。
他でやるよりも準備に時間がかかるしこだわりすぎて自分が大変という理由で。
「やっぱり餅は餅屋だと思うんだよ」
「それ二ノ宮家が聞いたら怒るんじゃないの?」
「大丈夫だよ。あそこは式は教会でやって披露宴はホテル。うちが受け持ったのは親しい人を集めたガーデンパーティーだけだから」
ああそうだっけ。
確かに自分のところで自分の結婚式一式をやったら大変だろうな。
経営者なんだから最高の物を準備しないといけないだろうし。
「ーーってことで、式に関しては焦らずゆっくり決めようぜ。一生に一度のことだし、どこでどんな形でやるかはじっくり考えたい」
そうね。瑞紀の結婚式は仕事上の立場もあるし、とっても大事なことだろうと思う。
私に拘りはないけれど、瑞紀の意見にもちろん異議はなし。