裏側の恋人たち
「主任の元カレなんて、よくそんな情報知ってたわね」
「先週の合コンで放射線科の技師からゲットしたんですよ。耳鼻科主任の元カレは退職することになって今有休消化中だそうです」
なるほど。
合コンも情報交換の場として有効だ。
「ありがとう、愛菜。あーすっきりした」
「いいえ、私も溜まってたんで吐き出せてよかったです。実はあの当時名前は出なかったんですけど、私の同期もヤツの毒牙にかかってたんでちょっと恨んでたんですよね」
愛菜の同期も・・・。
「アイツ本当にクソ野郎ね」
「男と女のことだし、一方的に被害者かっていうとそうじゃないかもなんですけど。無理矢理でもないし、誘いに乗ったのは本人なんで。でもむかつきますよね、クズにも程があるから今日出会えてラッキーでした」
「その同期の子はもう大丈夫なの?」
「たぶん。男を見る眼を養うといって合コンに参加してます。でも今は修行の身で自信がつくまで誰とも付き合う気はないんですって」
「そっか。クズのせいでトラウマにならないといいね」
「いい出会いがあれば一発解消なんでしょうけど」
いい出会いか。そればっかりは努力で補えるものじゃないし。
難しい。
長い付き合いだったらしい北山さんは施設に異動してからどうしているのか、彼女の噂は病院にまでは聞こえてこない。
耳鼻科の主任は見た目はいつも通りだけど、ストーカーチックな元カレのこともあるし心の中はわからない。
退職してしまった小児科の新人ちゃんは開業医さんに再就職したらしい。
女性患者や女子大生風の子などはどうしたのか知らない。
愛した男がクソだったーーー周りからみたら単純なことかもしれないけれど、真剣に愛していた人は真実を知ってどんなに傷ついたのだろう。
中には不実な姿をわかっていて遊びで付き合っていた人もいそうだけど。
相手によっては出会ったことが不幸の始まりってこともあると思うと、私が出会って恋した相手は瑞紀でよかった。
ーー女性の少ないところに送り込んでもあの先生の性根は変わらないんだろうか。
いっそのことあのクソを若者のいない島に置き去りにするとか紛争地帯の医療に尽くしてもらうとか世界平和のために一役買ってもらうってのはどうだろう。何度も言うけど、下半身に脳みそがあるだけで医師としての腕はいいのだ。
「世の中の道理ってものをわからないヤツは最低です。複数による交際の同時進行が許されるのは互いにそれを容認している場合のみで一方的に押しつけるのは間違ってます。あ、あと一夜限りっていうのもお互いさえよければいいわけじゃなくて、背景にいる誰かが傷つくのならやっぱりダメだと思うんですよね。もちろん、不倫とか最悪」
チワワの皮を脱いだ愛菜のこういう潔いところが好きなんだけど、反面彼女のプライベートな短いスパンで変わっていく異性関係が非常に心配だ。
どこか不安定な危うさを感じる。
「心配しなくても私は大丈夫ですよ」
心配している私の気持ちに気が付いたのか愛菜がにこりと笑顔を見せる。
私はそんな人の心の機微に敏感なところも心配なんだけど。
「先週の合コンで放射線科の技師からゲットしたんですよ。耳鼻科主任の元カレは退職することになって今有休消化中だそうです」
なるほど。
合コンも情報交換の場として有効だ。
「ありがとう、愛菜。あーすっきりした」
「いいえ、私も溜まってたんで吐き出せてよかったです。実はあの当時名前は出なかったんですけど、私の同期もヤツの毒牙にかかってたんでちょっと恨んでたんですよね」
愛菜の同期も・・・。
「アイツ本当にクソ野郎ね」
「男と女のことだし、一方的に被害者かっていうとそうじゃないかもなんですけど。無理矢理でもないし、誘いに乗ったのは本人なんで。でもむかつきますよね、クズにも程があるから今日出会えてラッキーでした」
「その同期の子はもう大丈夫なの?」
「たぶん。男を見る眼を養うといって合コンに参加してます。でも今は修行の身で自信がつくまで誰とも付き合う気はないんですって」
「そっか。クズのせいでトラウマにならないといいね」
「いい出会いがあれば一発解消なんでしょうけど」
いい出会いか。そればっかりは努力で補えるものじゃないし。
難しい。
長い付き合いだったらしい北山さんは施設に異動してからどうしているのか、彼女の噂は病院にまでは聞こえてこない。
耳鼻科の主任は見た目はいつも通りだけど、ストーカーチックな元カレのこともあるし心の中はわからない。
退職してしまった小児科の新人ちゃんは開業医さんに再就職したらしい。
女性患者や女子大生風の子などはどうしたのか知らない。
愛した男がクソだったーーー周りからみたら単純なことかもしれないけれど、真剣に愛していた人は真実を知ってどんなに傷ついたのだろう。
中には不実な姿をわかっていて遊びで付き合っていた人もいそうだけど。
相手によっては出会ったことが不幸の始まりってこともあると思うと、私が出会って恋した相手は瑞紀でよかった。
ーー女性の少ないところに送り込んでもあの先生の性根は変わらないんだろうか。
いっそのことあのクソを若者のいない島に置き去りにするとか紛争地帯の医療に尽くしてもらうとか世界平和のために一役買ってもらうってのはどうだろう。何度も言うけど、下半身に脳みそがあるだけで医師としての腕はいいのだ。
「世の中の道理ってものをわからないヤツは最低です。複数による交際の同時進行が許されるのは互いにそれを容認している場合のみで一方的に押しつけるのは間違ってます。あ、あと一夜限りっていうのもお互いさえよければいいわけじゃなくて、背景にいる誰かが傷つくのならやっぱりダメだと思うんですよね。もちろん、不倫とか最悪」
チワワの皮を脱いだ愛菜のこういう潔いところが好きなんだけど、反面彼女のプライベートな短いスパンで変わっていく異性関係が非常に心配だ。
どこか不安定な危うさを感じる。
「心配しなくても私は大丈夫ですよ」
心配している私の気持ちに気が付いたのか愛菜がにこりと笑顔を見せる。
私はそんな人の心の機微に敏感なところも心配なんだけど。