裏側の恋人たち
そんなことを何度かして、ちょっとした問題が発生した。
私の服装だ。

瑞紀の経営するお店の中には女子中高生をターゲットにしたスウィーツのお店もあればハワイアンカフェやファミレス、果ては高級レストランもある。

事前にどこに行くか教えてくれればその場にあった服装で行くのだけど、勘や感覚で生きてる瑞紀はその時の気分や状況で行く店を決めるので事前連絡などできないと言われてしまった。

そうなると困るのはこちらだ。
高級レストランに行く格好でカワイイカフェやファミレスに入ると浮くし、勿論反対の場合も同様。ドレスコードのあるお店にスニーカーでは入れない。

困った私は瑞紀に数点の服と靴を預かって欲しいとお願いすることにした。
だって入ったことないけど3階の自宅が広いのは建物の大きさを考えれば当然だったから。
物置の片隅にでも置いてくれたら助かる。

そんなことがあって、3階の瑞紀の自宅に入ることが許されるようになった。

私が『リンフレスカンテ』に行き瑞紀が現れる。
その時の私の服装が瑞紀の行きたい店の雰囲気に合わなければ3階の瑞紀の自宅で着替えををして出掛けるという流れに変わった。

実は荷物を置く場所を決めるときもすったもんだがあった。
使っていない部屋ということで荷物を置くのに瑞紀から提供された部屋っていうのがちょっと入りたくない部屋だった。

これ、どう見ても彼女の物だよね、という私物が置かれたお部屋。
ベッドこそ裸のマットレスが置かれていて使用中の雰囲気はなかったもののクローゼットを開けてみてがっかり。
棚の上には数点の香水と化粧品。ハンガーに掛けられた部屋着等々。

遺産なのか現在進行形で使用中なのかもわからない。
瑞紀は使ってない部屋だって言ったけど。

独身で恋人はいないと聞いていたけれど、自宅に出入りする女性の有無までは聞いたことはない。まさかセフレって可能性も?

あの部屋は使いたくないとお断りして掃除用具が入っている廊下の収納庫の一部を借りたいとお願いした。
瑞紀には全力で反対されたけど私も譲れない。
誰が他の女性の荷物と香りで一杯のクローゼットなど使いたいものか。

瑞紀の寝室のクローゼットを使うようにと提案されたけれど、それもお断りした。
だって寝室だもん。
瑞紀のベッドは見たくない。
あの荷物の持ち主の女性と瑞紀が一緒に寝ていたであろうベッドを見るとか、ほんとムリ。

恋心がある私が恋人として瑞紀のベッドに誘われるならともかく(それでもちょっと女性の荷物を見たあとではなんかいやだけど)友人程度の関係性でしかない私が瑞紀の寝室に立ち入るのは違うと思う。




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