裏側の恋人たち
ベビーたちの沐浴タイム、それは新米ママの休憩時間である。

翌日の談話室で愛菜と私が暴露合戦をし、水音ちゃんは泣くほど大笑いをしたのだったーーー。

「うぎゃー、待って、待って。どうして響さんが私の分娩室の様子を知ってるんですかっ。産科スタッフの守秘義務はどうなっているのか確認しなきゃ」

チワワの皮が剥がれかけてるぞ愛菜。

「あら、スタッフから聞いたんじゃないわよ。私がこの耳で聞いたんだもん。スタッフは関係ないから」

「え、マジですか。あれを自分の担当さん以外にも聞かれていたーーーー?」

途端に愛菜の表情が青くなる。

「分娩室お隣だったのよね。先に入った愛菜は知らなかったと思うけど」

「うわぁー。・・・・・・お産もうイヤだけど、やり直したい気分です」

普段チワワの皮を被っている愛菜は、チワワでない姿を産科スタッフの担当さんに知られてしまい肩身が狭いとこぼしていたから今まで黙っていたけど。

「大丈夫ですよ。お産の時なんて叫ぶ人いっぱいいるし、そんなことスタッフさんは気にしませんよ」

優しい水音ちゃんは慰めの声を掛けるけど。

「じゃあ水ちゃんは叫んだ?痛いのは旦那のせいだって、ヘラヘラしながら付き添うなって蹴飛ばした?自分はキモチイイばっかりでどうして私が痛い思いをしなきゃいけないんだって罵倒した?頑張れって言うけどあんたはこの痛みで頑張れるのって殴った?」

「え、えーっと。ごめんね、私は叫んではいないかな・・・・・・」

「こらこら、あんたは水音ちゃんに八つ当たりしないの」

水音ちゃんに噛みつく愛菜を止めると今度は恨みがましい目を私に向けてくる。うるるんチワワは完全にやめたらしい。

「もちろん響さんは叫びましたよね?」

「う、うーん。まあ多少声は出たけど、隣が賑やかだったもんだからちょっと引いちゃってさ。あんま声出せなかったわ。あ、あと、聞こえてくる内容が面白すぎてちょうどいい具合に力が抜けたのよね。サンキュー」

きいいいーっと地団駄踏む愛菜は放置して、泣くほど笑っている水音ちゃんに
「産休の後はどうするの?」
と声を掛けた。

「とりあえず育休をと思ってます。でも昨日も聞いてもらったんですけど、ワンオペ育児になると思うので復帰できるか・・・」

「そっか。先のことはわかんないけど、育休中に子連れで集合してご飯食べたり、遊ばせたり愚痴ったりしよう。その先も旦那が忙しい時期は私たちだけで旅行しちゃうのもいいと思わない?」

私の誘いに水音ちゃんの目が輝きはじめた。

「それすごく素敵です」

「うん、じゃあ決まり。メッセージのグループ作ろっか」

お互いにスマホを取り出すと「ちょっと待って、私も」と愛菜もスマホを取り出す。




< 66 / 136 >

この作品をシェア

pagetop