裏側の恋人たち
『リンフレスカンテ』や事務所の従業員ロッカーとか倉庫とかも提案してみたけれど、従業員ではないからと却下された。そりゃそうか。

「じゃあやっぱいいや」
すっぱりとここに荷物を置くことを諦めた私。

ドレスコードがあるような高級店には同伴しないと決めてしまえば問題ない。若者の店にはちょっと浮いてしまうかもしれないけど、かっちりしすぎずそこそこな年齢相応のファッションを考えよう。

あっさりと諦めた私に今度は瑞紀が顔を顰め、私がふたつめに提案した自宅の掃除用具入れを貸してくれることになった。

そして、次に行ったときには掃除用具が綺麗に撤去されていてご丁寧にハンガーパイプが設置されていた。
ありがたいけど、ちょっと申し訳ないと思いつつご厚意に甘えているわけだ。

あそこにあった掃除用具がどこに行ったのかは知らない。
瑞紀の自宅の中で私が知っているのは洗面所とリビング、そして掃除用具入れだけ。

食事に行くだけの関係だし


そんなこんなでほとんど毎日のように『リンフレスカンテ』に顔を出し、瑞紀のお供で出掛けたり、瑞紀の都合が悪ければそのまま店のカウンターで食事をして帰るというのが私の日常になっていた。

『リンフレスカンテ』のお料理が美味しいのもはずせない。


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