裏側の恋人たち
福岡先生の対応は優芽に任せ
「下林さんどうしました?」と廊下に出る。
「ねえねえ、これがこの間話したうちの孫。お見舞いに来てくれたの。そしたらちょうど浜さんが夜勤だから是非紹介したくってね」
「ほら、あんたもちゃんと挨拶しなさい」なんて言われて下林さんの背後からのっそりと男性が姿を現した。
「いつもばあちゃんがお世話になってます・・・」
ぺこりと頭を下げる男性は30代半ばくらいだろうか。
作業着の上着に紺のスラックス。
お仕事の帰りに祖母のお見舞いに来るなんていい孫だ。
だけどね・・・・・・。
「ほらっ、それだけじゃダメでしょ。連絡先とか聞いて今後に結びつけなさいよっ。せっかくばーちゃんが独身で気立てのいい看護師さん見つけてやったんだからさ。あんたも浜さんもいい年なんだからこういうチャンス逃しちゃダメなの」
誰がいい年だ。
まあ間違ってないけど。
だが、わたしにも、そして彼にも選ぶ権利はあるし、何より私は交際相手を紹介して欲しいなどと言ったことはない。
結婚しているかと聞かれて独身だと言っただけだ。
「下林さん、ごめんなさい。せっかくのご厚意なんですけど、患者さんやそのご家族に個人的な連絡先をお教えするわけにはいかないんですよ。お孫さんも困ってらっしゃいますよ」
怒りを抑えて笑顔で対応。
下林さんは行け行けって孫の背中を押しているけど、孫の方は困ってるじゃないか。
ばーちゃんに言ってないだけで彼女がいるかもしれないよ?
背が高いせいかちょっと猫背でおとなしそうな感じだけど、よく見ると優しそうな顔をしているし。
わたし?私は誰であっても患者さんのお孫さんなんて勿論お断りですよ。
大体にして入院してきたお年寄りたちは献身的に働くナースの姿に感動してこういったことを言ってくれるんだけど、それって裏を返すと自分の世話も献身的に見てもらえるとか思ってる人が一定数いるから。
下林さんがそうだとは言わないけど、人は学習するものなんですよ。実際、過去にそうはっきりと言われたこともあるし。
好きになった人のご家族が病気になったら出来るだけのことをしてあげたいと思うけど、はなからそれ目的で家族を結婚相手にと紹介されるとか、本当に勘弁して欲しい。私はひとりの自立した女で天使でも女神でもない。
そもそも結婚したいとは思ってないし。
「お孫さん、優しそうで素敵ですね。目元なんて下林さんそっくりじゃないですか。下林さんもお若い頃ずいぶんおモテになったでしょうね」
「あ、あらやだ。そうなの、似てるって言われるの。うふふ」
「ええ、お孫さんは私みたいなおばさんよりもっと若い子がお似合いですよ。下林さんあと数日で退院出来ますから、退院後も無理しないようにご家族でフォローしてあげてくださいね」
「じゃあ私は消灯前の投薬準備があるので失礼します」とそれ以上声を掛けられないようにナースステーションの奥に引っ込んだ。
これ以上何か言われてはかなわない。
はあ・・・・・・。
「下林さんどうしました?」と廊下に出る。
「ねえねえ、これがこの間話したうちの孫。お見舞いに来てくれたの。そしたらちょうど浜さんが夜勤だから是非紹介したくってね」
「ほら、あんたもちゃんと挨拶しなさい」なんて言われて下林さんの背後からのっそりと男性が姿を現した。
「いつもばあちゃんがお世話になってます・・・」
ぺこりと頭を下げる男性は30代半ばくらいだろうか。
作業着の上着に紺のスラックス。
お仕事の帰りに祖母のお見舞いに来るなんていい孫だ。
だけどね・・・・・・。
「ほらっ、それだけじゃダメでしょ。連絡先とか聞いて今後に結びつけなさいよっ。せっかくばーちゃんが独身で気立てのいい看護師さん見つけてやったんだからさ。あんたも浜さんもいい年なんだからこういうチャンス逃しちゃダメなの」
誰がいい年だ。
まあ間違ってないけど。
だが、わたしにも、そして彼にも選ぶ権利はあるし、何より私は交際相手を紹介して欲しいなどと言ったことはない。
結婚しているかと聞かれて独身だと言っただけだ。
「下林さん、ごめんなさい。せっかくのご厚意なんですけど、患者さんやそのご家族に個人的な連絡先をお教えするわけにはいかないんですよ。お孫さんも困ってらっしゃいますよ」
怒りを抑えて笑顔で対応。
下林さんは行け行けって孫の背中を押しているけど、孫の方は困ってるじゃないか。
ばーちゃんに言ってないだけで彼女がいるかもしれないよ?
背が高いせいかちょっと猫背でおとなしそうな感じだけど、よく見ると優しそうな顔をしているし。
わたし?私は誰であっても患者さんのお孫さんなんて勿論お断りですよ。
大体にして入院してきたお年寄りたちは献身的に働くナースの姿に感動してこういったことを言ってくれるんだけど、それって裏を返すと自分の世話も献身的に見てもらえるとか思ってる人が一定数いるから。
下林さんがそうだとは言わないけど、人は学習するものなんですよ。実際、過去にそうはっきりと言われたこともあるし。
好きになった人のご家族が病気になったら出来るだけのことをしてあげたいと思うけど、はなからそれ目的で家族を結婚相手にと紹介されるとか、本当に勘弁して欲しい。私はひとりの自立した女で天使でも女神でもない。
そもそも結婚したいとは思ってないし。
「お孫さん、優しそうで素敵ですね。目元なんて下林さんそっくりじゃないですか。下林さんもお若い頃ずいぶんおモテになったでしょうね」
「あ、あらやだ。そうなの、似てるって言われるの。うふふ」
「ええ、お孫さんは私みたいなおばさんよりもっと若い子がお似合いですよ。下林さんあと数日で退院出来ますから、退院後も無理しないようにご家族でフォローしてあげてくださいね」
「じゃあ私は消灯前の投薬準備があるので失礼します」とそれ以上声を掛けられないようにナースステーションの奥に引っ込んだ。
これ以上何か言われてはかなわない。
はあ・・・・・・。