裏側の恋人たち
それから忙しくなり、休憩する時間もとれないまま深夜勤務者との交代時間を迎えた。
ああ忙しかった。
幸いなことに当直医の手を借りるようなアクシデントもなく終わったのはよかったけど。
深夜勤務者が来て納得したことがひとつ。
「お疲れさまでした、浜さん」
「後はよろしくね、水ちゃん」
次の勤務者は水ちゃんだった。
ああそういうことね、と福岡先生がお菓子を持ってきた理由がわかった。
ナースの勤務表をドクターが知っているとは驚きなんですけど。
「さあ上がりましょ」
無事に引き継いだらさっさと帰らないと。
今日はろくに休憩も取れてないし。
「あ、浜さん。これ福岡先生からいただいたお菓子、浜さんの分ですぅ」
優芽から渡されたのは小滝堂の焼き饅頭。
ああ、これ好きなのよね。あんこは甘すぎず、あんこと皮のバランスもバッチリ。
「あれからわざわざ福岡先生が持ってきてくれたの?」
「ハイ、ちょうど浜さんたちが個室の処置に行ってくださってる間に。先生が夜勤の皆さんでどうぞって言ってたから準夜と深夜で分けちゃいました」
「そう。じゃ有り難く頂こうかな。これ好きなのよね」
手の中のお饅頭を見て今夜食べるか明日食べるか考える。
夕食もろくに口にしていないからお腹が空いているけど、夜中にお饅頭はヤバイ気がする。
でも、お腹空いてるし・・・・・・。
「浜さん、かわいいー、悩んでる」
からかうようにかなり年下の優芽に言われ「こら」とおでこをちょんとつついた。
「優芽はもう食べたの?」
「えへへ、スミマセン。お腹が空いて死にそうになったので勤務中にダッシュでつまんじゃいました」
「いいのよ、気にしなくて。まともに食事時間もとれなかったもの」
お腹が空いて当たり前だし。
このお饅頭、私はやっぱり明日食べることにしよう。帰って寝るだけだから30過ぎて深夜にお饅頭はダメだと思う。
野菜スープとささみを食べて寝よ。
「今日もお孫さん紹介されてましたねー。福岡先生ガン見してたからあんなの日常茶飯事ですよ、お孫さんから息子さんから患者本人までうちの浜姐さんはモテモテなんですって自慢しときました!」
あー、はいはいそうですか。
そんなこと言ってどうするっていうか、そんなこと言われても福岡先生が困るでしょ。
「さ、帰ろう」
後輩二人と更衣室に向かうためにエレベーターに乗ると途中のフロアでエレベーターが止まり、なんと偶然にも福岡先生が乗り込んできた。
「「「お疲れさまです」」」
私たちが口々に声を掛けると福岡先生も驚いたように此方を見た。
「お疲れさま、皆さん今お帰りですか」
「はい、先生はコールですか?」
「うん、でも簡単なオーダー頼まれただけだから。すぐ終わったよ。浜さんたちは忙しかったみたいだね」
「お饅頭ありがとうございます。いつも何だか頂いてばかりで申し訳ありません」
私がそう言うと優芽たちも「ごちそうさまです」とちょこんと頭を下げている。
「喜んでくれたならいいんですよ」
福岡先生はニコニコと笑顔で「またなにか差し入れます」とおっしゃる。
水ちゃんへのアピールのご相伴にあずかる身なのでなんと返事をしていいものやら。
返事の遅れた私に代わり優芽が「よろしくお願いしまーす」と元気よく返事をしている。
それに「いいですよ」と応える福岡先生は太っ腹。
もしかして人にあげるのが好きなのかもね。
ああ忙しかった。
幸いなことに当直医の手を借りるようなアクシデントもなく終わったのはよかったけど。
深夜勤務者が来て納得したことがひとつ。
「お疲れさまでした、浜さん」
「後はよろしくね、水ちゃん」
次の勤務者は水ちゃんだった。
ああそういうことね、と福岡先生がお菓子を持ってきた理由がわかった。
ナースの勤務表をドクターが知っているとは驚きなんですけど。
「さあ上がりましょ」
無事に引き継いだらさっさと帰らないと。
今日はろくに休憩も取れてないし。
「あ、浜さん。これ福岡先生からいただいたお菓子、浜さんの分ですぅ」
優芽から渡されたのは小滝堂の焼き饅頭。
ああ、これ好きなのよね。あんこは甘すぎず、あんこと皮のバランスもバッチリ。
「あれからわざわざ福岡先生が持ってきてくれたの?」
「ハイ、ちょうど浜さんたちが個室の処置に行ってくださってる間に。先生が夜勤の皆さんでどうぞって言ってたから準夜と深夜で分けちゃいました」
「そう。じゃ有り難く頂こうかな。これ好きなのよね」
手の中のお饅頭を見て今夜食べるか明日食べるか考える。
夕食もろくに口にしていないからお腹が空いているけど、夜中にお饅頭はヤバイ気がする。
でも、お腹空いてるし・・・・・・。
「浜さん、かわいいー、悩んでる」
からかうようにかなり年下の優芽に言われ「こら」とおでこをちょんとつついた。
「優芽はもう食べたの?」
「えへへ、スミマセン。お腹が空いて死にそうになったので勤務中にダッシュでつまんじゃいました」
「いいのよ、気にしなくて。まともに食事時間もとれなかったもの」
お腹が空いて当たり前だし。
このお饅頭、私はやっぱり明日食べることにしよう。帰って寝るだけだから30過ぎて深夜にお饅頭はダメだと思う。
野菜スープとささみを食べて寝よ。
「今日もお孫さん紹介されてましたねー。福岡先生ガン見してたからあんなの日常茶飯事ですよ、お孫さんから息子さんから患者本人までうちの浜姐さんはモテモテなんですって自慢しときました!」
あー、はいはいそうですか。
そんなこと言ってどうするっていうか、そんなこと言われても福岡先生が困るでしょ。
「さ、帰ろう」
後輩二人と更衣室に向かうためにエレベーターに乗ると途中のフロアでエレベーターが止まり、なんと偶然にも福岡先生が乗り込んできた。
「「「お疲れさまです」」」
私たちが口々に声を掛けると福岡先生も驚いたように此方を見た。
「お疲れさま、皆さん今お帰りですか」
「はい、先生はコールですか?」
「うん、でも簡単なオーダー頼まれただけだから。すぐ終わったよ。浜さんたちは忙しかったみたいだね」
「お饅頭ありがとうございます。いつも何だか頂いてばかりで申し訳ありません」
私がそう言うと優芽たちも「ごちそうさまです」とちょこんと頭を下げている。
「喜んでくれたならいいんですよ」
福岡先生はニコニコと笑顔で「またなにか差し入れます」とおっしゃる。
水ちゃんへのアピールのご相伴にあずかる身なのでなんと返事をしていいものやら。
返事の遅れた私に代わり優芽が「よろしくお願いしまーす」と元気よく返事をしている。
それに「いいですよ」と応える福岡先生は太っ腹。
もしかして人にあげるのが好きなのかもね。