裏側の恋人たち
「アイツは絶対近いうちにしれっと若い女と結婚するような気がするわ」
「なに、浮気してたってこと?」
「それはわかんないけど、そういう可能性もあるかな。最近あんまり会ってなかったし。他の女がいてもおかしくはなかったというか」
「うわ、最悪最低。それがホントなら殴りたい」
確かに吉乃は本当に忙しそうだったけど。だからといって浮気をしていいってことじゃない。
好きな女が出来たのならお別れをしてからするべきだ。けじめって大事じゃない?
「そんなことになったら私も当てつけで若い男と結婚してやろうかしら」
「いいんじゃない?イケメンで家事も手伝ってくれて甘えさせてくれる若い男って最高かもしれないわよ」
私たち、それなりに収入のある32才。無職のヒモはお断りだけど、しっかり将来を考えて働いている男の子なら年下でもオッケーかもね。
今まで考えたことなかったけど。
頭上から失礼しまーすと声がかかり料理が届いた。
「はい、本日のオススメの巨大蒸し牡蠣です。レモンでどうぞ。味変にはポン酢とオリーブオイルもいいですよ」
うわあ。立派な牡蠣。
大きくてふっくらとして食べたらぷるぷるしていそう。
「いただきまーす」
レモンを搾って口に入れると予想通りの味が広がってーーーああ幸せ。
「おまかせの刺身で今日は真鯛と生しらす、マグロです。こっちの日替わり煮物は今日、がんもどきと里芋です。焼き魚はもう少しお待ちください」
バイト君がテキパキとお皿を並べながらチラチラと吉乃を見ている。
ん?なんだろう。何か言いたげだけど。
「どうしたの?」
「・・・・・・すみません、さっき話がちょっと聞こえちゃって」
「ああ、あれ」
よりにもよって若い男の子に聞かれちゃうとは。
おばさんたちが何言ってんだって呆れられるのも冷たい目で見られるのもイヤだなぁ。
吉乃と視線を合わせて肩をすくめる。
「冗談よ、冗談。酔っ払いの戯言」吉乃が苦笑するとバイト君が真面目な顔になる。
「あの、それ。吉乃さんの相手、俺じゃダメでしょうか」
「はあ??」と女二人の声が重なる。
「俺、今はバイトの身分でここで勉強って言うか修行させてもらっていて。でも半年後には自分の店をオープンさせる予定になっていて。だから今はバイトですけど無職じゃないです。ヒモになるつもりもありません」
「・・・・・・。」
「ずっと吉乃さんの事いいなと思ってました。吉乃さんが年下でもいいと思っているのであれば俺のことを選んでください」
額に手ぬぐい、酒屋さんみたいな腰エプロンをしたバイト君は耳を赤くしながら一生懸命プロポーズをしている。
いいなあ、その真っ直ぐさ。
顔もいいからもともと女性客に人気だったし。
「わたし、席外そうか?」
腰を浮かしかけると、吉乃がわたしの手首をはっしと掴んで首をぶんぶんと横に振った。
「びっくりしすぎて、危うく意識飛ぶかと思ったーーー危なかったぁ」
大丈夫かなあ。
無言だと思ったら真っ白になってたのね・・・・・・。
「ええっと、バイト君、お名前とお年は?」
「みりや、桐生実矢です。25才」
「みりや・・・・・・。ああーふうん・・・・・・。名前も若い・・・・・・」
吉乃、引いてる、完全に引いてる。
確かに7才も下だし、しかも名前が若い。古風なわたしと吉乃の名前に対して実矢は音の響きもかなり今どきだ。
「なに、浮気してたってこと?」
「それはわかんないけど、そういう可能性もあるかな。最近あんまり会ってなかったし。他の女がいてもおかしくはなかったというか」
「うわ、最悪最低。それがホントなら殴りたい」
確かに吉乃は本当に忙しそうだったけど。だからといって浮気をしていいってことじゃない。
好きな女が出来たのならお別れをしてからするべきだ。けじめって大事じゃない?
「そんなことになったら私も当てつけで若い男と結婚してやろうかしら」
「いいんじゃない?イケメンで家事も手伝ってくれて甘えさせてくれる若い男って最高かもしれないわよ」
私たち、それなりに収入のある32才。無職のヒモはお断りだけど、しっかり将来を考えて働いている男の子なら年下でもオッケーかもね。
今まで考えたことなかったけど。
頭上から失礼しまーすと声がかかり料理が届いた。
「はい、本日のオススメの巨大蒸し牡蠣です。レモンでどうぞ。味変にはポン酢とオリーブオイルもいいですよ」
うわあ。立派な牡蠣。
大きくてふっくらとして食べたらぷるぷるしていそう。
「いただきまーす」
レモンを搾って口に入れると予想通りの味が広がってーーーああ幸せ。
「おまかせの刺身で今日は真鯛と生しらす、マグロです。こっちの日替わり煮物は今日、がんもどきと里芋です。焼き魚はもう少しお待ちください」
バイト君がテキパキとお皿を並べながらチラチラと吉乃を見ている。
ん?なんだろう。何か言いたげだけど。
「どうしたの?」
「・・・・・・すみません、さっき話がちょっと聞こえちゃって」
「ああ、あれ」
よりにもよって若い男の子に聞かれちゃうとは。
おばさんたちが何言ってんだって呆れられるのも冷たい目で見られるのもイヤだなぁ。
吉乃と視線を合わせて肩をすくめる。
「冗談よ、冗談。酔っ払いの戯言」吉乃が苦笑するとバイト君が真面目な顔になる。
「あの、それ。吉乃さんの相手、俺じゃダメでしょうか」
「はあ??」と女二人の声が重なる。
「俺、今はバイトの身分でここで勉強って言うか修行させてもらっていて。でも半年後には自分の店をオープンさせる予定になっていて。だから今はバイトですけど無職じゃないです。ヒモになるつもりもありません」
「・・・・・・。」
「ずっと吉乃さんの事いいなと思ってました。吉乃さんが年下でもいいと思っているのであれば俺のことを選んでください」
額に手ぬぐい、酒屋さんみたいな腰エプロンをしたバイト君は耳を赤くしながら一生懸命プロポーズをしている。
いいなあ、その真っ直ぐさ。
顔もいいからもともと女性客に人気だったし。
「わたし、席外そうか?」
腰を浮かしかけると、吉乃がわたしの手首をはっしと掴んで首をぶんぶんと横に振った。
「びっくりしすぎて、危うく意識飛ぶかと思ったーーー危なかったぁ」
大丈夫かなあ。
無言だと思ったら真っ白になってたのね・・・・・・。
「ええっと、バイト君、お名前とお年は?」
「みりや、桐生実矢です。25才」
「みりや・・・・・・。ああーふうん・・・・・・。名前も若い・・・・・・」
吉乃、引いてる、完全に引いてる。
確かに7才も下だし、しかも名前が若い。古風なわたしと吉乃の名前に対して実矢は音の響きもかなり今どきだ。