裏側の恋人たち
「・・・・・・どういうこと?天満さんは何か知ってたって?」
コール対応から戻ってきた天満さんに質問したわたしは普通だと思う。
出来れば優芽がいないときがよかったけど、それはまあ仕方ない。
「先生は割とわかりやすくアピールしてると思ってたんでしょうね。そっち方面は疎いのかしら。わたしにはわかりやすかったけど、当事者の浜さんはわかりにくかったでしょ」
わたしは更に首を傾げ、優芽を見ると優芽も首を捻っていた。
「浜さん、何回差し入れもらったの?」
天満さんに聞かれて考えてみる。何回かなーーー。
「6回、あ、7回かしら」
準夜勤で直接顔を合わせた時が4回。深夜勤で準夜勤務者から『福岡先生からの差し入れ、深夜勤務の分です』ってもらったのが3回。
「優芽は?」
「わたしは全部で4回ですよ。今日と同じ焼き菓子の詰め合わせとフランスのお高い発酵バターのフィナンシェでしょ、あとは小滝堂の焼き饅頭と三軒茶屋のカボチャプリン」
それ全部わたしも食べたことがある。
「ちなみにわたしは2回。どっちも準夜勤が浜さんでわたしが深夜勤だったわ」
ん?そうなの?
でも、それってたまたまなんじゃないの。
それにわたしと水ちゃんの勤務は重なることが多いからわたしがもらった回数が二人より多いのだと思うし。
「いい加減に気づいてあげてよ。もらったお菓子って浜さんの好物が多いと思わない?」
そう言われてみれば一番初めの時以外、わたしの好きなものが続いていて食の好みが合うのかと思っていた。それに、先日わたしの好きなカフェからも出てきたし。
「「・・・・・・まさかストーカー?」」
わたしと優芽の声が被った。
「わー、思考がまたそっちに行ったか!違う、違う!可哀想だからやめてあげてー」
天満さんが笑いながら否定する。
「情報提供者がいたのよ。ここまで言えばわかるでしょ。わたし二ノ宮さんと福岡先生が話してるの聞いちゃったのよ。館野先生公認で二人には共通の知人がいるそうよ。よくわからないけど、二ノ宮さんが浜さんの好物を福岡先生に教えてて、先生とても嬉しそうにしてたからああそうなのねって思ったの」
それは思ってもいなかったことで。
もしかして餌付けされそうになっていたとか。
ーーーわたしは何も言えず、ちょうど鳴り出したナースコールに対応してその場から逃げ出した。
もうしばらく考えたこともなかったもの。
恋とか愛とか
そんなこと。
福岡先生は水ちゃんが好きだったんじゃないってこと?
先生が私を餌付けする意味もわからないし、それほど接点もなかったはず。
ーーーーめんどくさくなって考えることを放棄した。