あのねあのね、
小学生の頃。
幾度となく本を読む度に、心に残った言葉や台詞は忘れないように胸に刻んだ。
でもそうしている間に、盗み聞きしていた同年代の子の会話の内容には入り込む余地すら無かった。
買ってもらったものの見せ合いや、お小遣いやお年玉がいくらかという値段の競い合い。
身につけるものをお揃いにしたり、リーダー格の子に気を遣うような雰囲気もあった。
そんな光景を、ずっと隅のほうで見ていた。
そうやって、ひとりでいた。
「だからなちさんに、今一緒にいたいと思える人がいるのだとしたら……誰に気を使わず、あなたの気持ちのまま、その人のそばにいていいの。一緒にいたいと感じる人ってきっと、自分の気持ちを受け取ってくれる人だもの」
「っ……!」
(あぁ…、この人は何かを言わなくても、私のことを理解してるんだ……)
ツーっと静かに流れた涙。
自分自身には到底言えないこの言葉を、心のどこかで待っていたような気がする。