あのねあのね、



「とりあえず食べれば?」


「あっ、はい…!いただきます……」


私はテーブル上に置かれた甘いショートケーキを口に運ぶ。


特別に隠し味があるわけでも、見た目が変わっているわけでもない。酸味のあるイチゴがひとつ乗った、ごく一般的な普通のショートケーキ。


それでも私にとっては特別で、自然と口元が緩んでいく。


夕凪くんは私がショートケーキを食べ終わるまでの間、ずっと待っていてくれた。


今日が私の誕生日だと一華さんにも伝えたら大騒ぎで、夜に連絡がいくはずだと、そんな話をしてくれながら……


「他に欲しいもんは?プレゼント、急だったから用意できなかったし」


「っ!」


誕生日に夕凪くんと会えたというだけで幸せなのに、そんな贅沢なことを言ってもいいのだろうか。
同時に、夕凪くんの底知れぬ優しさを感じてしまう。


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