あのねあのね、



「こ、子どもの頃は、あんなに遠くに感じてたのに…、その記憶はあっても…、今はもう二度と同じようには、感じることができないんだなって……」


「……」


「それが少しだけ、寂しくて……でも、きつかった道のりが、ちゃんと思い出として残ってることが、嬉しかったりもして……不思議だなって思ったんです」


もうあの時のようには感じることができない。
きっと今の自分が感じていることも、これから大人になるにつれて感じることができなくなることがあるのかもしれない。


それでも、あぁいうことを思ってたなとか、こういう気持ちになったなとか、これから先も覚えていたいと思う。


「あ……こっ、こんなコメントしづらい話、すみませ」


「あーくそ、ダメだ……っ」


「!?」


夕凪くんは突然髪を豪快に触り、優等生にしていたはずの髪型が乱れていく。
やっぱり夕凪くんは、決まりや規則に従うよりも、自由という言葉が似合う人。そう思った。


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