あのねあのね、
「でも、母は知らない男を連れ込んで…その、率直に言うと……不倫してたの」
「……っ、!?」
衝撃で息が止まる。全身が硬直して、寒くもないのに鳥肌が立っている。
「目撃した瞬間、すぐに仁を連れて外に出た。目的地もなくただ走った。なんだあの母親は、と思って……ろくに愛をくれないくせに、自分は誰かに愛を欲しがって縋りつこうとする。もう限界で、気持ち悪さから言っちゃったの……何で私、あの人の子どもなんだろうって……っ……」
一華さんが泣いている。
気づけば自分の目からも、涙が止まらず流れ落ちていた。
「仁の前で泣いちゃって、ただあの子は黙って聞いてた。自分も本当は泣きたかったはずなのにっ、相当ショックを受けたはずなのに……」
一華さんだって思い出して話すのは辛いだろう。
それなのに、どうして私に話してくれるの…?
赤ちゃんを寝かせて戻ってきた北風先生が、悟ったように一華さんの隣に座る。そして、まるで大丈夫だと言ってるみたいに、一華さんの背中をポンポンと叩いた。