あのねあのね、



「えっとそれで、不倫が発覚した後に両親が離婚したんだけど……仁が中学生になって、やっと少し気持ちも落ち着いてきたって頃に、あの人が家にやってきたの。今日みたいに、お金ちょうだいって……」


「……それは、渡していたお金を、使ってしまったということですか…?」


そう聞けば、ううんと首を横に振る一華さん。


「あるのよ、ちゃんと。持ってるのに、全然足りてないみたいに言うの。今日だってそう。そういう心の病気みたい」


(心の病気……)


夕凪くんのお母さんにも、きっと何かがあるのだと思う。病んでしまう心の原因が、何か。


それでも、私が図々しくも守らなければと思う人は、夕凪くんのお母さんじゃないんだ。


「その頃私は大学で家を出てて、父も仕事で不在の時だった…。あの人は忘れ物があるからって無理やり家に入って、仁にお金を要求してきたみたい」


中学生の頃の夕凪くん。
きっとお母さんと、どう接していいかわからなかったはず……


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