Cherry Blossoms〜潜入捜査官と天才医師〜

潜入捜査・九条桜士 天才医師・四月一日一花

深夜二時を過ぎた頃、都内にある榎本総合病院では大きな騒ぎが起きていた。

「コードブルー！コードブルー！五階西病棟、五百三号室！」

患者の急変を知らせるコードブルーの放送が深夜の病院に鳴り響き、二人の白衣を着た医師が廊下を走っている。一人は小柄な若い女性の医師、もう一人は黒人の体格のいい男性医師だ。

「五百三号室の患者さんって、五日前に救急車で運ばれてきた患者さんだよね？」

黒人の医師が女性の医師に走りながら訊ねる。五百三号室に入院している患者は五日前に吐血し、救急車で搬送されてきた。この二人の医師が処置を施した。

「そう！食道静脈瘤の宮崎春男（みやざきはるお）さん！処置は無事に終わったはずだけど……」

二人が五百三号室に入ると、機械の音がうるさく響いている。春男の胸につけられたモニターが、心拍や血圧が下がっていくたびに音を立てているのだ。

ベッドに寝かされた春男に、病棟の看護師が「宮崎さん！しっかりしてください！」と声をかけている。そのそばには、看護助手が不安そうに春男を見つめていた。

「すみません！診察させてください！」

女性医師が春男に駆け寄ると、「先生！」と看護師は一瞬ホッとしたような顔を見せる。だがその直後、春男の心拍が停止してしまった。