Cherry Blossoms〜潜入捜査官と天才医師〜
目を輝かせ、頰を緩ませている様子は処置をしている時の凛々しい表情とはかけ離れており、どこか愛らしさを覚える。桜士は、自分の顔が自然と笑みを作っていることに気付いた。胸の鼓動が早まり、苦しくなる。

(この気持ちはーーー)

その時、注文を終えたヨハンが「お〜い」と二人を呼ぶ。ヨハンは唐揚げ定食を、一花はご飯大盛りの生姜焼き定食を、桜士はざる蕎麦定食を持ち、テーブルへと運んで食べ始めた。

「本田先生、この病院どうですか?働きやすいですか?」

一花が興味津々といった様子で訊ね、桜士はざる蕎麦を飲み込んでから「前にいたところより、ずっと働きやすいです」と嘘をつく。

「よかったです!救急ってすぐに人が辞めちゃうから、嬉しい」

ニコニコと笑う一花の目の前に唐揚げが差し出される。ヨハンの頼んだ唐揚げ定食のものだ。

「一花、あげるよ」

「ありがとう!」

ヨハンから貰った唐揚げを一花は早速口に運び、「おいしい!」と笑顔を見せる。見ている方まで幸せを感じる表情だ。だが、その幸せを壊すかのように院内に放送が鳴り響く。
< 29 / 54 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop