Cherry Blossoms〜潜入捜査官と天才医師〜
「コードブルー!コードブルー!四階東病棟、四百十三号室!」

患者の急変が起きたのだ。桜士が立ち上がるよりも前に、一花とヨハンは走って行く。桜士も急いだ。

(四階……産婦人科か!)

エレベーターに乗り込み、四階の病室へと向かう。そこには、すでに産婦人科医である藍と研修医である練と聖の姿もあった。そして、小さなベッドの上でグッタリとして動かない赤ちゃんを、必死で藍が胸骨圧迫を続けている。その横では、母親が泣きながら様子を見守っていた。

「AED、持って来ました!」

看護師がパッドをつけ、スイッチを押す。だがーーー。

「十三時五十二分、ご臨終です」

その小さな命は、再び息を吹き返すことはなかった。母親はその場に泣き崩れる。藍は悔しげな顔を浮かべ、二人の研修医も暗い顔をしていた。一花とヨハンも苦しげな表情である。その時、赤ちゃんの名札が桜士の目に止まった。

『小泉ベビー』

それは、雪と絵梨花が話していた看護師の子どもだった。ドクンと桜士の胸が嫌な音を立てる。
< 30 / 54 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop