Cherry Blossoms〜潜入捜査官と天才医師〜
「仕事終わったなら、さっさと帰ってくださいね〜。お疲れさんした〜」

シッシッと野良猫を追い払うような仕草をされ、桜士の中に怒りが込み上げてくる。一花が「こら!」とヨハンを叱り始めるのを見ながら、桜士は更衣室で着替えを済ませ、病院を出た。

病院を出るとすぐ、雪は白い息を吐きながら待っていた。白いパーカーに黒いスキニーパンツというシンプルな服装である。

「本田先生、遅いですよ〜!」

雪は桜士を目にすると、ニコニコと笑いながら手を振る。どこにでもいる普通の女性のようだ。だが、桜士は口元だけ笑みを浮かべながら彼女を拘束できるタイミングを窺っている。

彼女が、榎本総合病院で起こっている殺人事件の犯人の一人だからだ。

「とりあえず、乗ってください。オススメのお店があるんです」

「わっ、かっこいい車〜!私、お金ないから車なくて……。いいなぁ〜」

桜士は車の助手席のドアを開け、雪は嬉しそうに乗り込む。運転席に座った彼はエンジンをかけ、人気の少ない場所へと車を走らせた。
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