離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
プロローグ
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 夫――大門桔平(だいもんきっぺい)、三十四歳。国内最大手の航空会社『ジャパンエアゲート航空』通称JG航空のパイロット。
 妻――大門美紅(みく)、二十四歳。JG航空キャビンアテンダント。

 私たち、本日離婚予定です。

「じゃあ、君もサインを」

 夫である桔平さんの大きな手がドラマや映画で見慣れたあの緑色の紙を私のほうへとすべらせる。

(婚姻届は小豆色だったよね? なんで離婚届は緑色なんだろう。自治体によって違うと聞いたこともあるけど、なにか意味があるのかな?)

 そんなどうでもいいことばかりが頭をよぎるのはきっと……この現実から目を背けたいからだ。
 私はそっと彼の顔を盗み見る。サラリとした癖のない黒髪に凛々しい眉。その下にある切れ長の双眸が大人の男の色香を醸し出す。身長は百八十二センチでしっかりと鍛えあげられた男らしい肉体の持ち主だ。

 綺麗なこの唇に一度くらいキスをしてみたかった、逞しい胸のなかに抱き締めてほしかった。これで終わり……そう思うと無性に寂しくなる。
 だけど、残念ながらそう思っているのは私だけのようだ。桔平さんは少しの動揺もないハキハキした口調で告げる。

「サインはまだ大門だから。間違えないようにな」
「あ、はい」
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