離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます～旦那様は政略妻への恋情を止められない～

「俺はたった今書いた離婚届をできれば出したくないと思っている」

　想定外すぎる台詞に私はパチパチと目を瞬く。

（離婚届を……出したくない？）
　
「それはその、どういう意味で？」

　彼の真意がまったくわからない。離婚届を準備したのもサインするように指示したのも桔平さんだ。私はただ従っただけ。

（私、現実逃避をしたいあまりに幻聴が聞こえるようになってる?）

　パニックに陥りかけている私の手に彼の大きな手が重なる。

「今度は家や会社のためじゃない。離婚前提でもない。俺と、ちゃんとした結婚をしてくれないか？」

　一度目のプロポーズも腰を抜かすほどに驚いたけれど、二度目のプロポーズの衝撃はそれ以上だった。椅子からすべり落ちそうになった私の耳に彼の声が届く。

「はま――美紅っ！」

　初めて彼が名前を呼んでくれた記念すべき瞬間。でも、ドスンというお尻への衝撃で余韻もなにもあったものではなかった。