離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
 パイロット時代からの習慣で彼は今も適度に身体を鍛えていておなかも全然出ていない。

「むしろ……ちょっと痩せたような」

 私はまじまじと彼の全身を見つめる。疲れているのか顔色が悪いし頬がこけたような印象だ。

「やっぱり社長は忙しい?」
「まぁ、そうだなぁ」

 今は桔平さんという新しい家族もできたけれど、慶一郎おじさんは私の父であり兄であり……とにかくかけがえのない存在だった。

「無理だけはしないで。会社も大事だけど自分の身体も大切にしないとダメだからね」

 私が深刻な表情になってしまったので慶一郎おじさんは慌てたように明るい声を出した。

「いやいや、接待とかゴルフとか楽しい予定で忙しいんだよ! 美紅たち社員のがんばりのおかげで我が社の業績は絶好調だ」

 JG航空の業績が好調なのは事実だが、社長業がそんなに楽しいことばかりではないことくらい私にだって理解できる。
 ダイニングテーブルに向かい合って座り私たちは早めのディナーを食べはじめた。

「うん。美紅の作る料理は素朴でうまいなぁ」
「それ、あんまり褒め言葉になっていないような……」

 それなりの料理歴なのに凝ったオシャレな料理が作れないのは私のささやかなコンプレックスだった。

「そんなことない。全力で褒めてるぞ! 男は結局家庭料理が好きだからなぁ。桔平くんも喜んでくれるだろう?」
< 111 / 183 >

この作品をシェア

pagetop