離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
「うん。でも桔平さん自身もお料理上手だよ。彼が作ってくれる日も多いし」

 私が彼を褒めるとなぜか慶一郎おじさんは不満げな表情をする。

「ソツがなさすぎるのもかわいくないな」
「そういうの難癖っていうのよ」

 私はクスクスと笑う。それから、少し勇気を出して尋ねてみた。

「ねぇ、慶一郎おじさんがずっと独身を貫いたのは私のため?」

 もし私の存在がなかったら、彼は今頃奥さんと子どもと過ごしていたりしたのだろうか。私の声が真剣なのを受けて慶一郎おじさんも真面目な顔で私を見た。

「そんなことないよ、と言っても美紅は信じないよな」

 私は黙ったまま彼の言葉の続きを待った。

「じゃあ白状する。――美紅があまりにもかわいくて、すっかり満たされてしまったんだよ」

 慶一郎おじさんはいたずらっぽい瞳で私の顔をのぞき込む。

「もうっ。真面目に聞いたのに」

 私は頬を膨らませた。

「だから正直に答えただろ。それにほら。結婚は俺みたいないいかげんな人間には向かないかなという気もするし」

 慶一郎おじさんがこんなふうに自分を卑下するのは珍しい。私は強く首を横に振る。

「いいかげんな人間なんかじゃないよ。だって慶一郎おじさんのおかげで私はちゃんと大人になれたんだもの……だから自分の幸せのことも考えてね」
「お前な、自分が幸せだからってひとり身を寂しい者扱いするのはどうかと思うぞ」
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