離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
「そんなこと! 私のほうが何倍も浮かれています。この時計は本当にオシャレだけど……多分、桔平さんが選んでくれたものならすっごくおかしなデザインだったとしても大喜びしてたと思います」

 おかしなデザインの時計がすぐには想像できないけれど彼が私のために選んでくれる、それもおそろいなら……どんなものでもうれしいに決まっている。

「桔平さんからの贈りものは全部、私の宝物です」

 満面の笑みで彼に告げると桔平さんはそっと私の頬を撫でながらささやいた。

「そんなかわいいことを言われたらフライトのたびに山のような土産を買ってきてしまいそうだ」
「うれしいけどおうちに入らなくなっちゃいますね」

 クスクスと笑いながら私は答える。

「そうなったらマンション暮らしをやめてマイホームを買おうか? いずれは子どもも欲しいし」

 マイホーム、子ども。桔平さんの口から飛び出す単語が私の涙腺を緩ませる。私の瞳が潤んだのを見て桔平さんは慌てる。

「どうして泣くんだ?」
「――私たち、本当に夫婦になれたんだなと実感して……もういつか来る別れにおびえなくていいんですね」

 桔平さんはグッと力強く私の背中を引き寄せた。彼の胸に深く抱きすくめられる。

「長い間、不安な思いをさせていて本当に悪かった。俺は最低の夫だったな」

 叱られた小学生みたいに反省している彼がなんだかかわいくて私はちょっと意地悪を言ってみる。
< 116 / 183 >

この作品をシェア

pagetop