離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
 桔平さんは最初から私を妻として大切にするつもりでいてくれた。それは理解できた。でも、どうしてそう決意してくれたのかという点が実はちょっと気になっていたのだ。

「自分で言うのも悲しいですけど、私は特別目立つものもないですしまだまだCAとしても未熟です」

 私でいいと思ってくれた理由はどこにあるのだろう。

「見合いの席で美紅に一目惚れしたんだよ」

(あれ、なんだろう……)

 かすかな違和感を覚えた。

 彼の答えはよどみなかったけれど、軽く伏せた睫毛がかすかに震えていた。声の調子もやや硬い。皮肉にも一緒に過ごす時間が増えたことで私は彼の微妙な変化に気がつくようになっていた。

(誠実な人だから……嘘はあんまり上手じゃないんだな)

 見合いの席で一目惚れ。それが真実じゃないことを私は悟ってしまった。

 それから一週間後。

「今日はニューヨーク便だから帰宅はまた三日後だ。このところ海外フライトばかりで申し訳ないな」
「謝ることじゃないですよ。パイロットの大変さは理解しているつもりですし、家のことは私に任せてください!」

 穏やかな笑みを向けると彼は愛おしそうに目を細めて私の頬にキスを落とす。

「自分はそんなに結婚願望が強いほうではなかったんだが……結婚はいいものだな。帰りを待ってくれている人がいることがこんなにも幸せだとは知らなかった」
「私もです。いってらっしゃい、桔平さん」
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