離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
「いやぁ、とはいっても創業者一族の桔平くんも浜名派ってことだろう? 大門家の後ろ盾は大きいよ」
「そもそも彼がパイロットをやめて経営陣に入るのが一番丸くおさまりそうだけどな。ほら、他社にもいたよな。パイロットから幹部になった人」
「まぁ、それは最大の謎だな」

 私はそっとその場を離れた。慶一郎おじさんが心配で心が落ち着かない。

(社長退任……本当にその可能性があるのかな。桔平さんが操縦桿を手放さないといけなくなる可能性も?)

 あれこれ考えている間にふとある疑念が頭に浮かぶ。

(本社のゴタゴタの件、桔平さんは知ってたのかな? お義父さんから聞いてたとしてもおかしくないよね。あれ、じゃあもしかして……)

 考える必要はないと思うのにやけに頭が冴えて次々と推測が浮かんでくる。

(私との離婚を撤回したのは、慶一郎おじさんと会社の安定のためだったとか……)

 桔平さんは一度目のプロポーズのときから私と一生添い遂げる覚悟だったと言ってくれた。その言葉を信じたいし信じなくてはいけないと思う。だけど――。

『見合いの席で美紅に一目惚れしたんだよ』

 彼のついた小さな嘘が黒いシミとなって私の心にぽつりと落ちる。

(本当は愛されてなんかいない……ううん、そんなはずない!)
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