離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます～旦那様は政略妻への恋情を止められない～

　様子を見ていた彼らのお母さんが急ぎ足で近づいてきて私に詫びた。三人の子どもをひとりで連れているのだろう。ぐったりと疲れた様子だった。赤ちゃんと一緒の空の旅はなにもなくてもとても神経がすり減るのだろう。私はこれ以上彼女に気を使わせないよう明るい声で言った。

「大丈夫ですよ。かわいいお子さまたちと出会えて私も元気をもらえました」
「……あ、ありがとうございました」

　お母さんの表情がホッとしたように緩む。バツの悪そうな顔をしていた兄弟も私を見て小さな声で「ごめんなさい」と言ってくれた。

「またのご利用をお待ちしております」

　私は手を振ってその家族を見送った。

　空港のバックヤードに入りオフィスに向かうところで私はすれ違う人からの妙な視線に気がついた。

（私、なんだか見られているような……）

　すると後方からささやき声が聞こえた。

「なにあれ。みっともない」
「あぁ……浜名さんね。ほら、採用も結婚も全部コネ利用の子」
「あのレベルで大門機長の妻の座をゲットできるんだもんね。私も有能な叔父さんが欲しかったわ～」

　自分のことを言われているのはすぐにわかった。チラリと後ろに視線を向けると同じ便に乗務していた先輩ＣＡたちだった。私と目が合うと彼女たちもやや気まずそうな顔はしたものの……ひるむことなく私に近づき追いこしていく。

「事実だし謝らないわよ」