離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
(桔平さん、今夜は出雲にステイだし……相談は無理そうだな)

 そのことにどこかホッとしている自分もいる。桔平さんの口から彼女が昔の恋人だったと聞くのが怖いのかもしれない。

 翌日の夜二十一時。朝早くから四本のフライトを終えたあとにさらに予定を入れるのは正直なところ結構きついけれど、それは彼女も同じだろう。小柴さんも今日は国内フライトで仕事終わりに会おうという話だったから。
 私は約束の五分前にカフェに着いたけれど、彼女が到着したのはそれから二十五分後だった。けれど、遅刻をとがめるつもりはない。

(あがりの時間が読めないのはきっとお互いさまだもの)

 それにDLC空港のデブリはうちより厳しい……なんて話も耳にしたことがある。

「あぁ、ごめんなさい。遅くなってしまって!」

 陶器のように美しい肌に華やかなローズリップ。シフォンのプリーツスカートから伸びる脚はキュッと引き締まっている。私と同じくらい長身だ。
 キラキラとしたオーラをまとった小柴美玲さんが私のいる席に近づいてくる。たまに街で芸能人に遭遇するとあきらかに一般人とは違う空気をまとっていたりするが、彼女もそんな印象だった。周囲の客もなんだかざわついた様子で彼女を見ている。

(空港以外のカフェにすればよかったかも……)
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