離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
 あらためて見る彼女は私よりいくつか年上に見えた。華やかで、桔平さんと並んだらさぞかし絵になることだろう。

(私とは身長くらいしか共通点がないな)

 彼女と付き合っていた桔平さんがどうして自分と結婚する気になったのか、ますます自信をなくしてしまいそうだ。

「――ふっ、うぅ」

 突然、小柴さんが両手で顔を覆って泣き出した。さっきまでの強気な態度からの豹変ぶりに私は呆気に取られた。

「あ、えっと、大丈夫ですか?」

 さめざめと涙を流しながら彼女は言う。

「気丈にしなきゃと思っていたけど、あなたの顔を見たら我慢も限界になってしまったわ。どうしてあなたばかりが……」

 小柴さんの声には私への恨みがこもっていた。だから続く言葉はなんとなく予想がついていた。彼女は顔をあげるとキッと私をにらみつける。

「私ね……あなたと結婚するからと彼に捨てられたのよ」

 返す言葉が出てこない。

(桔平さんはそんな人じゃないと信じたいけど、お見合い以前の彼の交友関係は私にはわからないし……)

 彼女はハンドバッグからなにかを取り出しテーブルの上に並べた。二枚の写真だった。一枚は桔平さんと彼女のツーショット。ふたりとも今よりずいぶん若く見える。

(そんなに長い付き合いだったの? それが私のせいで壊れた?)

 この写真だけでも大きなショックだったのにもう一枚はさらに私を揺さぶった。

(う、嘘でしょう?)
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