離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
生まれたばかりと思われるかわいい赤ちゃんの写真。その子を優しく抱っこしているのは小柴さんだ。この写真を私に見せる意味がわからないほど鈍感にはなりきれない。
「この子は……」
震える私の声にかぶせて彼女が言った。
「彼との子よ。私はいいの。でも……せめてこの子は父親に会わせてあげたくて」
「子どものこと、桔平さんは?」
心のうちとは裏腹に私の声は妙に冷静だった。彼女はゆるゆると首を横に振る。
「知らせていない。私を忘れて幸せな結婚生活を送っている彼に伝えられるわけがないわ。でも迷ったけど――」
子どものために行動を起こしたということだろう。
その後は少しだけ言葉を交わして彼女と別れた。
『彼が子どもと会ってくれるよう、美紅さんからも頼んでくれない?』
そんなふうに言われてうなずいた記憶はあるけれど、写真を見てからずっと頭が痛くて脳にモヤがかかったような感覚だった。悪い夢を見ているとしか思えない。
カフェを出た私はその場に崩れ落ちるようにかがみ込んだ。周囲の人がギョッとしたようにこちらを見ているけど、そんなことはどうでもよかった。
(息が苦しい。このまま……消えてしまいたい)
「この子は……」
震える私の声にかぶせて彼女が言った。
「彼との子よ。私はいいの。でも……せめてこの子は父親に会わせてあげたくて」
「子どものこと、桔平さんは?」
心のうちとは裏腹に私の声は妙に冷静だった。彼女はゆるゆると首を横に振る。
「知らせていない。私を忘れて幸せな結婚生活を送っている彼に伝えられるわけがないわ。でも迷ったけど――」
子どものために行動を起こしたということだろう。
その後は少しだけ言葉を交わして彼女と別れた。
『彼が子どもと会ってくれるよう、美紅さんからも頼んでくれない?』
そんなふうに言われてうなずいた記憶はあるけれど、写真を見てからずっと頭が痛くて脳にモヤがかかったような感覚だった。悪い夢を見ているとしか思えない。
カフェを出た私はその場に崩れ落ちるようにかがみ込んだ。周囲の人がギョッとしたようにこちらを見ているけど、そんなことはどうでもよかった。
(息が苦しい。このまま……消えてしまいたい)