離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
桔平さんはゆっくりと歩み寄ってきて私の両手をギュッと握る。
「……美紅、このところ俺をさけていないか? お互いに忙しいのは事実だがそれにしても不自然だ。最近の俺たちは結婚当初に戻ってしまったようだよな」
返す言葉がない。仕事を理由に私をさけていた結婚当初の桔平さん。最近の私はあの頃の彼と同じことをしていた。彼は苦しげな目で私を見つめる。
「やっとあのときの君の気持ちを正確に理解できた。夫婦なのに支え合えない状況は本当に寂しい」
(そうだよね。もっと早く向き合うべきだった)
「ご、ごめんなさ――」
謝罪しようとした私の言葉を遮って彼は言う。
「けど、美紅が理由もなく俺をさけたりしないこともわかってるんだ。俺は君になにをしてしまった? 話してほしい」
「――はい」
桔平さんの優しさに、深い愛情に、涙がこぼれそうになるのを必死にこらえた。固くつながれたふたりの手に私は視線を落とす。
(本当はこの手を離したくない。桔平さんとずっと一緒に……)
その未練を断ち切るように私はひと息に告げた。
「離婚してください、桔平さん」
彼の目が大きく見開かれる。言葉もないようでただただ呆然としている。彼はくしゃりと前髪を乱してうめくように言葉を発した。
「どうして……そんなことになるんだ?」
彼は切なそうに自身の左手首に巻かれた時計を見つめている。その片割れはもう私の手首にはない。
「……美紅、このところ俺をさけていないか? お互いに忙しいのは事実だがそれにしても不自然だ。最近の俺たちは結婚当初に戻ってしまったようだよな」
返す言葉がない。仕事を理由に私をさけていた結婚当初の桔平さん。最近の私はあの頃の彼と同じことをしていた。彼は苦しげな目で私を見つめる。
「やっとあのときの君の気持ちを正確に理解できた。夫婦なのに支え合えない状況は本当に寂しい」
(そうだよね。もっと早く向き合うべきだった)
「ご、ごめんなさ――」
謝罪しようとした私の言葉を遮って彼は言う。
「けど、美紅が理由もなく俺をさけたりしないこともわかってるんだ。俺は君になにをしてしまった? 話してほしい」
「――はい」
桔平さんの優しさに、深い愛情に、涙がこぼれそうになるのを必死にこらえた。固くつながれたふたりの手に私は視線を落とす。
(本当はこの手を離したくない。桔平さんとずっと一緒に……)
その未練を断ち切るように私はひと息に告げた。
「離婚してください、桔平さん」
彼の目が大きく見開かれる。言葉もないようでただただ呆然としている。彼はくしゃりと前髪を乱してうめくように言葉を発した。
「どうして……そんなことになるんだ?」
彼は切なそうに自身の左手首に巻かれた時計を見つめている。その片割れはもう私の手首にはない。