離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
 オシャレな制服を着て空港内を颯爽と歩くCAはやっぱりかっこよくて惚れぼれした。それに、子どもの頃の私は〝慶一郎おじさんのお嫁さんになる〟と無邪気に信じていたのでパイロットの彼を手助けできるCAに憧れたのだ。

(もっとも本気で目指すことになったきっかけは別にあるんだけど……それは私だけの秘密にしておこう)

「尊は英語力を活かしたかったからだよね?」

 社内初の男性CAである彼は注目の的で、社内報で特集されたり学生向けのイベントに駆り出されたりすることも多い。そのたびに志望動機を口にしていたので私も知っている。

「まぁね。それに海外だと男性CAはごく普通だから、子どもの頃からなんとなく自分に合いそうな仕事だなぁと思ってたんだよ」

 そこまで言ってから尊は軽く眉をひそめた。

「日本で育ってたら目指さなかったかも。こっちではまだまだびっくりされることが多いしなぁ」

 彼は決して愚痴をこぼしたりはしないけれど、男性CAならではの苦労もきっと多いだろう。
 尊は後頭部をかきながら、チラリとこちらを見る。

「そういやさ、旦那とはうまくいってるのか?」

 突然の話題転換に私の心臓は大きく跳ねる。

「え、そ、そうだなぁ」

 さりげなく流したいのに声が裏返ってしまった。

「なんかあったのか?」

 すかさず尊に突っ込まれ、どうにかごまかそうと必死になる。
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