離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
(そ、そうなのね。とりあえずあの赤ちゃんにはちゃんとママとパパがいるのか。喜ばしいことだけどちょっとだけ複雑……)

 あれほど悩んでいた時間はなんだったのだろうと徒労感に襲われる。

「美紅に見せたという俺とのツーショット写真は? 合成か? 君と写真を撮った覚えはないぞ」
「そこまではしないわよ。あれは就活のときにJG航空の説明会で撮った写真を切り抜いて拡大したの。とりあえず一番イケメンの隣をゲットしとこうと思ったんだけど、思わぬところで役立ったわ」

 小柴さんはJG航空の就職説明会にも参加したらしい。そのとき桔平さんは先輩社員として話をしていたようだ。

(桔平さんは立っているだけで絵になるから、こういう場に駆り出されやすいんだろうなぁ)

 私には全然お声がかからないけど、尊や夕菜もよく広報や人事から依頼があるようだった。

「言われてみれば画質は荒かった気がします」

 あのときは〝桔平さんの子ども〟というインパクトで考えもしなかったが、今思い出すとツーショット写真のほうはかなり不鮮明な感じだった。
 私の言葉に桔平さんは深いため息を落とした。

「もういい。行こう、美紅。彼女とこれ以上話をしても疲れるだけだ」

 小柴さん本人を前になかなかきつい言葉だが私も同意せざるを得なかった。

 帰宅後、疲れきったようにソファに腰をおろした桔平さんに私は尋ねた。
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