離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
(桔平さんは今夜もフライトかな? 家にいたり……はないよね)

「おかえり。おつかれさま」

 玄関を開けると桔平さんがわざわざリビングから出てきて声をかけてくれた。彼が在宅していたことも、私を出迎えてくれたことにも驚いてあたふたしてしまう。

「き、桔平さん。今日はオフだったんですか?」
「あぁ、伝えていなかったか?」

(ゆうべはあの爆弾発言以降の会話はあんまり覚えていなくて――)

 桔平さんはにっこりとほほ笑む。

「よかったら今夜も一緒に食事をしないか? ゆうべのお返しに俺が作るよ」
「えぇ? 桔平さんは多忙なんですから、オフの日くらいしっかり休んでください。おなかが空いているなら私がなにか――」

 そんな私の台詞を遮って彼はきっぱりと言う。

「フライトで疲れている君とオフで休んでいた俺。俺が作るのが当然だ」
「でもっ」
「JG航空はチームワークをなにより大事にしているだろ。ひとりに負担が偏らないようにするのは基本だ。さ、着替えておいで」

 キッチンへと向かう彼の背中を見送る私の頭のなかは疑問府でいっぱいだった。

(……チーム。これまでは極力干渉し合わないというスタンスだったのに別人みたい。離婚しない発言も、いったいなにがあったんだろう?)

 シャワーを済ませた私はゆったりとしたカーディガンにワイドのリブパンツというリラックススタイルでダイニングの扉を開けた。
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