離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
 私のあとを引き取って桔平さんが続ける。

「美紅は参加者のひとりだった。インタビュータイムで俺の班に入ってくれて帰り際に少しだけ話をした」
「はいっ! まさか桔平さんが覚えていてくれたなんて」

 あのプログラムは数日間にわたって開催されていて参加者はかなりの人数だっただろう。個別に言葉を交わしたとはいっても、私以外の子ともそんな場面はたくさんあっただろうと想像していた。

(だから桔平さんは覚えていないと思ってたけど……)

 彼のほうもひどく驚いた顔をしている。

「前にテーマパークで美紅はこのときの話をしてくれただろう? でもそのパイロットが俺だとは思ってもいないように見えたから」

 桔平さんは困惑げに続ける。

「制服ってある種の記号というか、一個人としての印象は薄れてしまうものだし君の記憶に〝パイロットの男〟としてしか残っていないのも当然だと思っていたが……そうか、覚えていてくれたんだな」
「はい。絶対に無理だと思っていたJG空港に採用されて、すぐに桔平さんがまだ在籍しているか捜しました」

 空港内で初めて姿を見かけたときは感動してしばらく動けなかったほどだ。

「テーマパークであの話をしたときにどうして教えてくれなかったんだ?」

 彼は首をかしげて私を見る。

「忘れてて申し訳ないと桔平さんに思わせてしまうのが嫌で……」

 私はそこで言葉を止め、もうひとつの理由も正直に告げた。
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