離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
「それに十六歳からずっと片思いしてたなんて……さすがに重すぎるかなと」

 小さく肩をすくめた私を見て彼は優しく目を細める。

「桔平さんは……どうしてそのパイロットは自分だよと言ってくれなかったんですか?」

 桔平さんは困ったように眉尻をさげてしばらく逡巡していた。

「白状すると決めたものの……やっぱり問題がありすぎるよな。俺と美紅だけの話にしておいてくれよ」

 そんな前置きをしてから彼は話し出す。

「あのとき俺はすでにいい大人で……まだ高校生だった君に心を奪われたと正直に話すわけにはいかないだろ」
「え……?」

 桔平さんの言葉の意味がすぐには理解できなくて私は目を瞬く。彼はバツが悪そうに視線を上へとそらした。

「あの頃の俺はパイロットを続けていくべきかどうか迷っていたんだ。周囲からは大門の人間だからコネ採用だとか、気を使ってやりづらいとかあれこれ言われて」

 当時を思い出しているのか彼の表情は曇り気味だ。

「パイロットの道はすっぱり諦めて経営幹部を目指すべきかと迷っていたんだ。美紅との出会いはそんなときだった。純粋に夢を語る君に……どうしようもなく心を揺さぶられた。美紅が俺に夢を思い出させてくれたんだ」
「私が……桔平さんに影響を与えたってことですか?」
「あぁ。君がCAになるまで待っていると約束したからな。俺もパイロットの道を諦められなくなった」
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