離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
 それは初耳だった。桔平さんから聞いたところによると、沖野コーパイは私たちに多少の罪の意識はあったようで退職を決意する一因にはなったようだけれど……小柴さんは一ミリも反省している様子はなかった。どうして退職することになったんだろうか。
 ここは個室で誰も聞いてはいないのに夕菜は少し声をひそめた。

「それがね、莫大な資産のある投資家と結婚するからって自慢げに寿退社したのに退社直後にその男が結婚詐欺師だったことがわかったらしいよ」
「あぁ……彼女、いかにもそういうのに引っかかりそうだもんなぁ」

 尊はあきれとも同情ともつかない微妙な表情で聞いている。

「ま、悪いことすると自分に返ってくるってことよね。私も気をつけよ!」

 夕菜が言うと尊も真顔で同意した。

「だな。俺も二度と過ちは犯さないようにしよう」
「なになに? 尊くん、なんか悪いことしたの?」

 夕菜に詰め寄られ尊はタジタジだ。話題を変えたかったのか尊は腕時計に視線を落として私に聞く。

「そろそろスペシャルゲストの到着じゃないか?」
「あ、そうだね。夜八時には合流できそうって言ってたから」
「既婚になったとはいえ大門機長と飲みに行ったなんてみんなにうらやましがられちゃうな~」

 そんな話をしていたところにスペシャルゲストである桔平さんが登場した。

「悪い、ちょっと遅くなった」

 謝罪する彼に夕菜はブンブンと首を横に振る。
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