離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
 尊はからりとした笑顔を見せた。

「美紅の友人の地位までは失いたくないと思ったので」

 夕菜はメニューを桔平さんに向けながら尋ねる。

「大門機長はなにを飲みますか? 最初はビール?」
「ありがとう。でも俺はノンアルコールで」
「夫婦そろって今夜は禁酒? 明日は朝一のフライトではないでしょう?」

 この業界の〝朝早い〟は早朝四時出勤などをさすので前夜の飲酒は厳禁だ。全員が朝一のフライトではない日に飲み会を設定している。

「えーっと」

 私と桔平さんは目を合わせてかすかにほほ笑む。

「え、え、嘘?」

 夕菜はすぐに勘づいたようだけれど尊はいぶかしげに首をひねり「なんだよ?」と尋ねてくる。私はそっと自分のおなかに手を当てる。

(まだ発覚したばかりだけど、ここに桔平さんと私の――)

 緩みそうになる顔を慌てて引き締めてからふたりに告げた。

「実は妊娠がわかったの。でもまだ安定期前だから内緒にしててね!」
「もし俺が不在のときに美紅になにかあったら助けてやってほしい。お願いします」

 桔平さんはかしこまった様子でふたりに頭をさげる。

「任せてください! わ~楽しみだね」
「おめでとう! 美紅、大門機長」

 夕菜も尊も満面の笑みで祝福してくれる。

「ありがとう!」

 四人での食事会はとても楽しく、私の体調を見ながらまた集まろうと約束して解散となった。

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