離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
 帰りの車で、桔平さんはハンドルを握りながら私に聞く。

「体調は大丈夫か? 無理はするなよ」

 おなかの赤ちゃんは八週目に入ったところだ。つわり症状が出てくる時期のはずだけれど今のところ私の体調に大きな異変はない。

「大丈夫……というより絶好調です。もしかしたら、つわりがものすごく軽い体質なのかも」
「そうだとしても身体をちゃんといたわってくれよ」
「――はい」

 桔平さんの愛情がうれしくて私は素直にうなずく。

「しばらくは地上職だろう。乗務を離れるのは不安もあるだろうが学べることも多いと思うよ」

 原則としてCAは妊娠が発覚したその日からフライト業務はできなくなる。でもJG航空では産前休暇に入るまで地上職として勤務できる制度があり私はそれを利用させてもらう予定でいる。

「はい。寂しさはありますけど地上でしかできない任務をしっかりがんばろうと思います」

 空の安全を守っているのは飛行機に乗務するクルーだけではない。みんなの力があってこそだ。

(桔平さんたちパイロットやCA仲間を地上からサポートするんだ!)

「あぁ。それにしても……自分が父親、美紅が母親になるなんてまだ実感が湧かない気がするよ」

 いつかは子ども……そんな話はたしかにしていたけれど、その日がこんなに早く来てくれるとは私も桔平さんも思っておらず、妊娠が判明したときは交互に押し寄せる喜びと驚きで心が大忙しだった。
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