離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます～旦那様は政略妻への恋情を止められない～

　つい先日、歴代最年少で機長に昇格したＪＧ航空エースパイロットである彼はとにかく多忙だ。三年目に入ったばかりで国内線乗務が主の私と違って日本を離れている日も多い。だけど私たちの間に思い出がない原因はそこではない。
　おそらく、私は彼にさけられていたのだ。

（私がフライト先ステイの日には帰宅した痕跡があったもの。偶然がそんなに重なるわけないよ）

　まぁ、今さら考えても仕方のないことだ。私は気持ちを切り替えるべく無理やり明るい声を出す。

「桔平さん。最後くらい一緒に食事をしませんか？　簡単なものでよければ作りますよ」

　夫婦でいる最後の夜くらい彼と楽しく過ごしたい。そう考えて提案してみた。すると、桔平さんは驚いたように目を見開いてから少し照れた様子で「ありがとう」と言ってくれた。彼に断りを入れてから私は豪華なアイランドキッチンに向かう。
　胸まである長い黒髪をシュシュでまとめる。癖のないストレートヘアだけど最近は毎朝毛先を巻いたりしている。多少は女らしくなれるかも！とがんばってはいるのだ。

　ＣＡと聞けば誰もが華やかな美女を想像するだろう。でも、残念ながら私はちょっと違う。身長が百七十センチもあるのでスタイルだけは褒められるものの顔立ちはおとなしめだ。奥二重の瞼につぶらな瞳。唇は薄く小さめ。